eぶらあぼ 2016.12月号
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56ライナー・ホーネック ©Kioi Hall,Tokyo第106回 定期演奏会 2017.4/21(金)19:00、4/22(土)14:00第107回 定期演奏会 2017.6/30(金)19:00、7/1(土)14:00第108回 定期演奏会 ホーネックのモーツァルト選集Ⅰ2017.9/22(金)19:00、9/23(土・祝)14:00第109回 定期演奏会 2017.11/24(金)19:00、11/25(土)14:00第110回 定期演奏会 ミュトスとロゴスⅠ「四つの気質」2018.2/9(金)19:00、2/10(土)14:00紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061※発売日などの詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.kioi-hall.or.jp/紀尾井ホール室内管弦楽団 2017年度定期演奏会創造性豊かな、室内オーケストラの新時代が始まる文:柴田克彦 室内オーケストラ編成によるハイクオリティな演奏で人気の紀尾井シンフォニエッタ東京が、「紀尾井ホール室内管弦楽団」としてリニューアル。相性の良さを再三示してきたウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・ホーネックを首席指揮者に迎えて、新たなスタートを切る。精鋭による精緻な合奏、フル・オーケストラでは聴けない名作の演奏、中型ホールでの迫真のサウンドといった元来の魅力に、音楽的な柱を加えた新展開への期待は、すこぶる大きい。 幕開けの第106回定期は、もちろんホーネックの出番。冒頭にストラヴィンスキーのバロックと現代を繋ぐ作品を置き、バッハの協奏曲で自身ソロを弾く、象徴的なプロで始まる。後半は、1時間近く緩徐音楽が続く異色の傑作、ハイドンの「十字架上のイエス・キリストの最後の七つの言葉」。オリジナルの管弦楽版の実演は稀だし、緻密な合奏力が生きる音楽は再始動にも相応しい。 第107回は、パリ室内管で長年手腕を発揮してきたジョン・ネルソンが、ルーセルの「蜘蛛の饗宴」(交響的断章)、ビゼーの交響曲ハ長調というフランスの佳曲を披露。室内オーケストラの音楽作りの達人と精妙な同楽団の本領がフルに発揮される。さらには、情熱的かつ堅牢な小菅優がソロを弾く、ショパンのピアノ協奏曲第2番を聴けるのも嬉しい。 第108回は、新シリーズ〈ホーネックのモーツァルト選集〉。スタートとなる今回は、同楽団のメンバーで東響首席奏者の福士マリ子が吹くファゴット協奏曲、後期の名作「プラハ」交響曲、愉悦感に溢れた「第1ロドロン・ナハトムジーク」の3曲が演目。モーツァルトは楽団とホールのサイズに最適だし、最後に置かれたディヴェルティメントの生演奏も貴重だ。 第109回は、急速に名を上げるサッシャ・ゲッツェルが、メンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」、シューマンのチェロ協奏曲、交響曲第2番が並んだ“ドイツ前期ロマン派名曲プロ”を指揮する。チェロは名手アントニオ・メネセス。この回は、壮麗かつ繊細なシューマンの交響曲第2番の二面性が浮き彫りにされるなど、フル・オーケストラと室内オーケストラ両方の魅力を味わえる。 最後の第110回は、ホーネックによる新シリーズ〈ミュトスとロゴス〉の開始となる公演。これは神話(ミュトス)や聖書、観念(ロゴス)に着想された名曲を取り上げていくもの。今回は、「四つの気質」という概念を、J.シュトラウス父のワルツと、ピアノ独奏を伴うヒンデミットの変奏曲で聴き比べる。共に珍しい演目だし、小川典子のダイナミックなピアノも聴きもの。またシューベルトの小協奏曲と交響曲第5番で、ホーネック十八番の妙演を堪能できる。 日本では稀な創造性に満ちた新シリーズは、1年を通して興味津々だ。2017.1/17(火)15:00 19:30問 Hakuju Hallチケットセンター 03-5478-8700http://www.hakujuhall.jp/第25回 ワンダフルoneアワー 郷ごうこ古 廉すなお(ヴァイオリン)稀代の駿才に驚嘆する濃密な1時間文:柴田克彦 郷古廉はどこか“孤高”の雰囲気を漂わせている。1993年宮城県多賀城市生まれの彼は、13歳でメニューイン青少年国際コンクール・ジュニア部門で史上最年少優勝し、20歳でティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝を果たした。07年からソロや協奏曲で活躍するほか、11、12、14年「サイトウ・キネン」の「兵士の物語」にも出演している俊英ヴァイオリニスト。完璧なテクニックはもとより、才能ひしめく同世代の奏者の中でも、峻厳かつ豊穣な音楽性で、ひと際強い光を放っている。 今回彼は、Hakuju Hallの「ワンダフルoneアワー」に出演。バルトークのソナタ2曲を披露する。両曲は、民族音楽の要素をモダンな絶対音楽に昇華させた、前衛的・技巧的な難曲。郷古の持ち味に合った、彼が得意とする作品でもある。16歳からウィーンで研鑽を積む彼は、東京でのリサイタルが多くないだけに、今回は本領を知る貴重な機会。しかも“oneアワー”で濃密に味わえるとなれば、ぜひとも足を運びたい。
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