eぶらあぼ 2016.12月号
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55五島記念文化賞オペラ新人賞研修記念 佐藤康子 ソプラノ・リサイタル12/20(火)18:30 東京文化会館(小)問 日本オペラ振興会チケットセンター044-959-5067 http://www.jof.or.jp/佐藤康子(ソプラノ)流麗な響きにあふれんばかりの感情をのせて取材・文:岸 純信(オペラ研究家)Interview 豊かな美声とその高い完成度で客席を唸らせるソプラノ、佐藤康子。この12月に「五島記念文化賞オペラ新人賞研修記念」リサイタルを東京で開催する。 「私は、若手歌手の登竜門と言ってもいいスポレート実験歌劇場で勉強をすることができました。コンクールによる厳しい審査を勝ち抜いた若者がオペラを学ぶ場で、欧州人だけが応募できるのです。私はたまたま、芸術監督に直接声を聴いていただく機会があり、マスターコースへの参加が許可されたのです」 それはまさに例外的なこと。“芸術の神”が味方したのかもしれない。 「本当に幸運でした。スポレートでは大歌手のカバイヴァンスカ先生やブルゾン先生に加え、指揮者やコレペティトゥーアの方から3~4ヵ月間集中的にレッスンを受け、その後オペラ公演が行われ、《イル・トロヴァトーレ》と《ラ・ボエーム》に私も起用されたので、研修生と一緒に舞台を作ることができて感激しました。カバイヴァンスカ先生には今も師事しています。最初の年、持ち歌を全部披露したところ、先生から『ヴェルディをさらにいくつか勉強してみない?』と言われて、翌日、新しいアリアを持って行きました。すると先生が『譜読みが早い! イタリア人は1週間はかかるのに!』と驚かれて。日本なら当たり前なのですが(笑)、それで先生とのご縁が深まりました。今では人生の師のように思っています」 しっとりした声音と豊かな息遣いが持ち味の佐藤。今回のリサイタルではヴェルディやプッチーニのアリアや二重唱(共演:笛田博昭)でその美質を披露するが、今後の目標は? 「私の声質であるソプラノ・リリコは低音や中音域での声の御し方が難しく、支えが機能しないと、中間音で声が出すぎて高音のスタミナが足りなくなります。今はオファーの9割方が《蝶々夫人》ですが、中音域をさんざん歌って疲れ切ったところに高い音が待ち構えているという非情なるオペラで(笑)調整が難しいです。今年、藤原歌劇団で《トスカ》を歌わせていただきましたが、重くなく、演じ易く歌いやすいように曲が書かれていて、これからも歌いたいと思いました。蝶々夫人よりも私に合っているのかもしれません。ヴェリズモ・オペラを歌うにはもっと時間が必要なので、リリコの枠を超えずに声の鍛錬を続けたいです」 佐藤の歌の出発点を。 「中学に上がると同時に声楽を勉強しはじめました。東京芸大では平野忠彦先生に厳しくご指導いただき、2006年にイタリアに渡ってもう10年です。今はパルマに住み、モデナの音楽院に通っています。真のイタリア・オペラに必要なのは大音量で驚かすのではなく、母音を丁寧に繋げて抒情的で紡ぐように歌い、イタリア語の流麗な響きにあふれんばかりの感情をのせることです。リサイタルでは、等身大のいまの私をお聴きいただけたら嬉しいです!」12/6(火)13:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/浜離宮アフタヌーンコンサート 福井 敬(テノール) × 横山幸雄(ピアノ)松本 隆・訳詞による シューベルト「美しき水車小屋の娘」CDで話題になった好企画がライヴで実現!文:宮本 明横山幸雄©Muse Entertainment 福井敬と横山幸雄! このレアで豪華な顔合わせの「美しき水車小屋の娘」というだけでも必聴に値するけれど、それが松本隆訳の日本語版となれば期待値は最高ランクだ。熱心なクラシック・ファンなら「ああ、あれか!」と思い当たるはず。2004年にCDが発表されて話題になった企画が再現される。松本は、1970年前後にわずか数年だけ活動した伝説の日本語ロック・バンド「はっぴいえんど」のメンバーとして、その解散後は松田聖子をはじめとする日本歌謡曲界の大ヒット作詞家として、プロフェッショナルに“音楽と言葉”に関わってきた人。クラシック音楽にも造詣が深く、1992年に、「冬の旅」の口語日本語訳を発表した。厳しい商業音楽の最前線で研磨され続けてきた言葉たちが、意味を理解するための和訳ではなく、“歌うことば”として耳になじむ。日本人にとって最も自然で理解しやすい言葉で映し出されるのはしかし、シューベルトとミュラーの描いた原風景だ。福井 敬

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