eぶらあぼ 2016.12月号
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36マレク・ヤノフスキ ©Felix Broedeウルフ・シルマー ©Kirsten Nijhofアンドレアス・シャーガー ©Panliエリーザベト・クールマン ©Julia Wesely 今や春の上野の風物詩となった「東京・春・音楽祭」。2017年は3月16日から1ヵ月間にわたり、東京文化会館や美術館・博物館、上野学園 石橋メモリアルホールなど、上野に集まる多数の文化施設を舞台に約150もの公演が開催される。注目の公演をご紹介しよう。 まず最大の目玉公演はワーグナーの《ニーベルングの指環》完結篇となる楽劇《神々の黄昏》(演奏会形式)(4/1,4/4)。名匠マレク・ヤノフスキとN響の強力コンビによる重厚なサウンドと緊密なアンサンブルは大きな聴きものとなる。ロバート・ディーン・スミスのジークフリートをはじめ、世界的なワーグナー歌手たちが集結、今回も高水準の演奏がくりひろげられることになるだろう。 毎年オーケストラ付きの合唱曲をとりあげる「合唱の芸術シリーズ」では、ウルフ・シルマー指揮の都響と東京オペラシンガーズが、シューベルト最後のミサ曲第6番他を演奏する(4/9)。シューベルトの重要作とみなされつつも演奏機会は決して十分といえない作品だけに、名指揮者シルマーの棒で聴けるのはうれしいかぎり。 音楽祭の開幕を飾る「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」では同楽団コンサートマスターのアンドレアス・ブーシャッツと首席チェリストのオラフ・マニンガーらがピアノ・トリオの名曲を聴かせる(3/16)。 昨年の《ジークフリート》で清新な歌唱を披露してくれたアンドレアス・シャーガーが再登場するのも話題を呼びそう。今回は彼がオペレッタの名曲を歌い、ヴァイオリンのリディア・バイチも登場する(3/19)。バイロイト音楽祭で長年活躍した4人によるバイロイト祝祭ヴァイオリン・クァルテットも再登場となる(3/29)。ヴァイオリン四重奏による編曲作品である《ニーベルングの指環》組曲の世界初演が興味深い。 さらに、この音楽祭ならではの個性豊かな企画も数多い。「東京春祭 歌曲シリーズ」では、バリトンのマルクス・アイヒェ(4/2)、メゾソプラノのエリーザベト・クールマン(4/7)のリサイタルが開かれる。東京文化会館小ホールの親密な空間で、オペラとはまた違った繊細な表現に触れることができる。 音楽祭のレジデント・オーケストラ、東京春祭チェンバー・オーケストラは堀正文ら日本屈指の名手と若き精鋭たちによるアンサンブル(3/20)。ヴィヴァルディ、グリーグ、モーツァルトの作品が演奏される。今回から3年かけて行う郷古廉のヴァイオリンと加藤洋之のピアノによるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会Ⅰ(4/13)にも期待が膨らむ。 知的好奇心をくすぐるシリーズも健在だ。「東京春祭ディスカヴァリー・シリーズ」第4弾は「忘れられた音楽――禁じられた作曲家たち」。ウィーン国立音大教授ゲロルド・グルーバーを招き、亡命音楽家たちをテーマにレクチャー付きのコンサートが開かれる(3/20)。新シリーズ「ベンジャミン・ブリテンの世界」は5年間にわたり、20世紀イギリス最大の作曲家ブリテンの全貌に迫る(3/26)。恒例「東京春祭マラソン・コンサート」は、「ロマン派〜近代に生きた芸術家たち」がテーマ。丸一日をかけた5部構成のコンサートだ(4/8)。 ミュージアム・コンサートもこの音楽祭らしい好企画。美術館や博物館とのコラボレーションが展開される。また、「桜の街の音楽会」として、上野の文化施設や近隣施設での無料コンサートも予定される。 コンサート会場だけではなく、上野の街全体が音楽に包まれるのがこの音楽祭の魅力だ。春の訪れが待ち遠しい。東京・春・音楽祭 ―東京のオペラの森2017―どれも聴き逃せない充実のラインナップ文:飯尾洋一東京・春・音楽祭 ―東京のオペラの森2017―2017.3/16(木)~4/16(日) 東京文化会館、上野学園 石橋メモリアルホール、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館 他問 東京・春・音楽祭チケットサービス03-3322-9966※各公演の発売日などの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.tokyo-harusai.com/
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