eぶらあぼ 2016.11月号
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81西本智実(指揮) エルサレム交響楽団 西本智実 × マーラー“聖地”のオーケストラが醸し出す深い響き文:林 昌英中井恒仁 & 武田美和子 ピアノデュオリサイタル “ピアノの芸術 ” vol.2世界が認めるデュオの魅力に浸る文:長井進之介11/29(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 テンポプリモ03-5810-7772 http://www.tempoprimo.co.jp※西本&エルサレム響の全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.tomomi-n.com 80年近い歴史を持つユダヤの名門団体、エルサレム交響楽団。ガリー・ベルティーニが常任指揮者を務めたこともあり(現在はフレデリック・シャスラン)、巨匠音楽家との共演も多数。いよいよ初来日を果たし、その実力を披露する。 日本ツアーを率いるのは、世界を舞台に活躍する西本智実。本人に直接話を伺う機会があったが、ユダヤ系の名音楽家たちから影響を受け続けてきたと述べ、「この共演は大きなこと。ついに念願が叶う」と力を込めていた。11月前半にエルサレムを訪れて同響と公演を行い、その成果を日本にそのまま持ち込む形になる。エルサレムはユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地でもあるが、「その多様な影響を体感し、現地の空気感なども想像していただける演奏にしたい」とのこと。 メインはマーラーの交響曲第5番。西本の得意演目であるばかりか、同響にとってもユダヤ人マーラーは特別 デュオはもちろん、それぞれのソロでも「国際音楽コンクール世界連盟WFIMC」加盟のコンクールで入賞している、中井恒仁&武田美和子ピアノデュオ。これは日本で唯一であり、世界でも大変稀なこと。実力を幾重にも保証されていると言えよう。共に東京芸術大学、ミュンヘン音楽大学大学院を修了。更にザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学にて研鑽を積んだ彼らは「マレー・ドラノフ国際2台ピアノコンクール(USA)」第4位入賞を果たしたことを契機にデュオで国際的な演奏活動を開始。近年では、フランス・ボルドー音楽祭に出演し、ドイツでもリサイタルツアーを行ったが、「ナイトの称号を与えるべき音楽芸術」と新聞紙上で絶賛されるなど、欧州でもその評価は高い。 この世界的なデュオが、11月にリサイタルを開催。2台ピアノのレパートリーとして最高峰に位置するラフマニノフのな存在。作曲者自身、1897年にユダヤ教からキリスト教に改宗し、ウィーンでの成功と挫折、アルマとの結婚を経て、1902年に完成したのが第5番。公私の複雑な感情が詰め込まれた大作を“エルサレムの”代表的なオーケストラで聴ける。熱演という以上の、真に貴重な体験となろう。「組曲第2番」を中心に、中井、武田それぞれがソロでラフマニノフのソナタ第2番、プロコフィエフのソナタ第7番も演奏するという、かなり豪華で濃厚なプログラムとなっている。 また、二人は今年の8月にドヴォルザークの「交響曲第9番『新世界より』」と「スラヴ舞曲」を収めた連弾のCDも発売し、精緻かつ緊密なアンサンブル、華麗な技巧を楽しませてくれたばかり。 ソロ、2台ピアノ、連弾と、ピアノ演奏全般のエキスパートであるデュオに注目だ。 前半はドヴォルザークのチェロ協奏曲で、ソリストはドミトリ・ヤブロンスキー。ロシア・フィルの首席指揮者も務める才人で、懐深い名演の期待大。また、ドヴォルザークとマーラー、両者とも出身はチェコのボヘミアという共通点があるが、同じ公演での組み合わせは意外と少なく、その妙味も注目だ。エルサレム交響楽団11/16(水)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jpCD『ドヴォルザーク:新世界より&スラヴ舞曲集』T&KエンタテインメントQACK-30009¥2857+税西本智実 ©塩澤秀樹©Toshiaki Yamada

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