eぶらあぼ 2016.11月号
80/217
77日本フィルハーモニー交響楽団 第九交響曲特別演奏会 2016全力投球の一体感に充ちた、熱い「歓喜の歌」文:柴田克彦東京芸術劇場 世界のマエストロシリーズ vol.4ミシェル・プラッソン(指揮) 読売日本交響楽団フランス最後の巨匠の至芸に触れる唯一の機会文:柴田克彦指揮:下野竜也(12/17,12/18)、小林研一郎(12/21~12/27)12/17(土)18:00、12/27(火)19:00 横浜みなとみらいホール 12/18(日)14:30、12/22(木)19:00 サントリーホール12/21(水)19:00、12/24(土)14:00 、12/26(月)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp10/29(土)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 http://www.geigeki.jp 年末恒例の「第九」も、最近は多彩な指揮者による斬新な解釈が、これまでにない刺激をもたらしている。だが、迫力あるストレートな演奏を聴きたい方も多いだろう。そんな方には、日本フィルの「第九」がお勧めだ。ここでは、渾身の指揮と全力投球のオーケストラ&合唱団による、熱い「歓喜の歌」を聴くことができる。 その看板といえるのが、例年登場している小林研一郎。“炎のマエストロ”コバケンの「第九」は、タメやテンポの激変をいとわない、ハイカロリー&ハイテンションの熱演。ダイナミックレンジが広く、高揚感は圧倒的で、感動の渦に巻き込まれること間違いなしだ。また今年は、下野竜也も2公演を指揮する。こちらは引き締まった造型の中で細部 フランス伝統の香りを伝える最後の名匠ミシェル・プラッソンが、この秋、1回の公演のために来日する。彼は今年83歳。4月には新国立劇場の《ウェルテル》を怪我でキャンセルしただけに、思わぬ朗報だ。1933年パリ生まれのプラッソンが、73年から2003年まで30年間シェフを務めたトゥールーズ・キャピトル管との膨大な録音、05年パリ管を含めた来日公演、10年、13年二期会への客演などを通して、シルクのような肌触りをもつ同国独特の音色美や、生粋のフランス人だけが表現し得る洒落たエスプリを聴かせてきたのは衆知の通り。もはや20世紀初頭のフランス文化の空気感を伝える人間国宝的存在と言っても過言ではない。 今回は、東京芸術劇場が『世界のマエストロシリーズ vol.4』のためだけに招聘した貴重な来日。当シリーズを受け持つ読響との初共演も大きな注目点となる。現在の読響は、ゴージャスまで躍動する「第九」が期待されるし、彼は熱いパッションの面でもヒケを取らない。ちなみに歌手陣は、共に日本を代表するスターが揃う。 さらに面白いのは前半の演目。コバケンの公演では、石丸由佳のオルガン独奏で、バッハの「アリオーソ」と「トッカータとフーガ」が演奏され、各会場自慢のパイプオルガンの響きを、おなじみの名曲で体感できる。下野の公演は、何とボイエルデューの歌劇《バグダッドの太守》序曲。同曲は日本人が懐かしさをおぼえるメロディをもった明快な佳品で、ベートーヴェンと同時代のフランス人作曲家を対照させるセンスが、いかにも下な色彩感にかけては日本随一と言えるオーケストラ。同じフランス人のカンブルランに磨かれた精緻なサウンドを有する彼らが、プラッソンの手腕発揮に最適の銘器たることは間違いない。それだけに本コラボへの期待に胸が踊る。プログラムも、ラヴェルの「ボレロ」、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」「海」など、フランスの人気名曲ばかり。中でもフォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」(歌付き)と、サティの「ジムノペディ」第1番・第3番のドビュッシー編曲による管弦楽版を生で聴けるのが嬉しい。 これは、近代フランス音楽の神髄を真に堪能できる、必聴のワンチャンスだ。野らしい。 もちろん、創立60周年を迎え、サウンドのクオリティも厚みも増している日本フィルの力演も要注目。ここは生気みなぎる「第九」を聴いて、ホットな年末年始を迎えよう!下野竜也 ©山口 敦ミシェル・プラッソン小林研一郎 ©山口 敦
元のページ