eぶらあぼ 2016.11月号
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72CD『モーツァルト:レクイエム(弦楽四重奏版)』マイスター・ミュージックMM-3090 ¥3000+税10/25(火)発売マティアス・ストリングス(弦楽アンサンブル)弦4人だけで奏でるモーツァルト「レクイエム」取材・文:渡辺謙太郎Interview NHK交響楽団の第1ヴァイオリン・フォアシュピーラーとしておなじみの齋藤真知亜。彼の名前を冠した弦楽アンサンブル「マティアス・ストリングス」は、2014年にJ.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」の弦楽三重奏版を発表。きめ細やかでみごとなバランスを誇る表現が大好評を博した。あれから約2年、今回はモーツァルトの絶筆「レクイエム」の弦楽四重奏版の、おそらく日本初となる録音に挑んだ。共演は、降旗貴雄(ヴァイオリン)、坂口弦太郎(ヴィオラ)、宮坂拡志(チェロ)。いずれもN響で活躍する若き実力派だ。齋藤は、今回の録音に格別の思い入れがあったと語る。 「オケマンで、室内楽奏者で、クリスチャンでもある私は、この録音は使命のように感じていました。これを後世に残すならば、若い人たちと一緒にやりたいと思って、この3人に声をかけました。楽譜のベースは、ペーター・リヒテンタールが1826年に出版した弦楽四重奏版。それを丹念に改編し、歌詞のメッセージにこだわりつつ、和声などの楽曲の構築性も失わない様に、試行錯誤は旋律や歌詞の一節ごとに及びました」 この編曲作業には、共演の3人も参加。全員が納得するまで議論を重ねた日々は、「まるで音大時代に戻ったような純粋な気分」だったそうだ。 第2ヴァイオリンの降旗は齋藤から“宿題”をもらった。 「中でも思い出深いのが、第7曲『ラクリモーサ(涙の日)』。内声の僕が主旋律である歌詞パートの演奏を担当するので、真知亜さんから編曲を“宿題ね”と任されて。和声の中での自分の動きを意識しながら、必死で頑張りました(笑)」 チェロの宮坂は、今回の録音を「驚きの連続でした」と振り返る。 「そもそも、この作品の弦楽四重奏版の存在を知りませんでした。真知亜さんの編曲譜では、チェロ・パートは冒頭の『イントロイトゥス』からリヒテンタール版とかなり違っていました。主旋律と伴奏を一人二役で弾くようになっていたのです。他にも、倍音の引っ張り方を各曲によって変えるなど、色々と工夫を凝らしました」 意外にもN響でモーツァルト「レクイエム」を演奏した経験は、記憶に薄いという4人。同曲で共演してみたい指揮者を尋ねたところ、ヴィオラの坂口を始めとして奇しくも、全員から同じ答えが返ってきた。 「今年のベートーヴェン『第九』でも共演する、ヘルベルト・ブロムシュテットさんですね。彼は実に知的で構築性の高い指揮者であることに加え、信仰の厚い方でもあります。言葉と心の限りを尽くす彼のリハーサルを想像するだけで、胸が高まるのです」12/18(日)14:00 すみだトリフォニーホール問 Sony Music Foundation 03-5227-5233http://www.smf.or.jpSony Music Foundation 小・中・高校生のための第九チャリティ・コンサート2016「第九」を聴いて社会貢献文:長井進之介フランチェスコ・イヴァン・チャンパ 次世代の子供たちのためにクラシック音楽を通して様々な活動を行ってきたSony Music Foundation。2011年からはチケット収入の一部と公演当日の募金が東日本大震災復興支援活動に役立てられる「第九」チャリティ公演を開催している。 今年は、欧州を中心に交響曲やオペラなど幅広いジャンルで高い評価を得ているフランチェスコ・イヴァン・チャンパが新日本フィルハーモニー交響楽団と栗友会合唱団を指揮する。独唱陣も豪華な顔ぶれだ。国際的に活躍するソプラノの中村恵理、オペラと宗教曲両方のジャンルで高い評価を受けているメゾソプラノの手嶋眞佐子とテノールの吉田浩之、バリトンは多くのコンクールで優勝や入賞を果たした大注目の若手、岡昭宏である。また軽妙なトークが魅力の朝岡聡がナビゲーターを務めるので、楽しい時間となるのは間違いない。これまでは小中高生と子どもを対象としていたが、今年は枚数限定ながら大人のみの券も用意。託児サービスもある。家族で気軽に「第九」を楽しめるまたとないチャンスだ。上段左より:齋藤真知亜、降旗貴雄 下段左より:坂口弦太郎、宮坂拡志
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