eぶらあぼ 2016.11月号
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69CDデビュー10周年リサイタル 松田理奈 ヴァイオリンの偉人たちに寄せて10周年の記念に贈る、偉人たちの宝石箱文:柴田克彦チョ・ソンジン(ピアノ)一段と成熟を深めた新星文:高坂はる香2017.1/17(火)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp2017.1/19(木)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 神奈川芸術協会045-453-5080 http://www.kanagawa-geikyo.com他公演2017.1/9(月・祝)札幌コンサートホールKitara(オフィス・ワン011-612-8696)、1/12(木)福岡シンフォニーホール(092-725-9112)、1/15(日)ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)、1/20(金)愛知県芸術劇場 コンサートホール(CBCテレビ事業部052-241-8118) 愛すべきヴァイオリンの小品たちを、技術の確かな若い奏者による本格的なコンサートで、まとめて聴く機会は意外に多くない。松田理奈のCDデビュー10周年リサイタルは、その稀少な公演だ。彼女は、2004年日本音楽コンクールで第1位を受賞し、ドイツのニュルンベルク音楽大学と同大学院を首席で修了。06年ビクターよりデビュー・アルバムをリリース後は、リサイタルやCD録音を重ね、今秋のハンガリー国立フィルやN響、都響をはじめとする主要オーケストラとの共演も続けている。確かな技巧で楽曲の特質を衒いなく表現する、紛れもない実力派だ。13年には新日鉄住金音楽賞を受賞。イザイの無伴奏ソナタの全曲録音が高く評価され、そうした難曲もたびたび披露している。 その彼女が今回あえて行うのが、小品集による記念リサイタル(共演はピアノの江口玲)。それは「どれほどヴァイ 昨年ショパン国際ピアノコンクールで優勝に輝いたチョ・ソンジン。その後、同コンクールのガラ・コンサートやオーケストラとの共演のために何度か来日しているが、聴くたびに、優勝者としての自覚が彼をさらなる高みに導いていることを実感する。 今度のリサイタルで取り上げるのは、ショパンに加え、チョの多面性を示すレパートリーだ。冒頭に置くのは、ベルクのピアノ・ソナタ。彼は、師事しているミシェル・ベロフの影響で近現代作品に積極的に取り組むようになったといい、これまでにもバルトークやプロコフィエフで新鮮な音楽を聴かせてきた。今回、あの端正なタッチでどんなベルクを披露するのだろうか。 そして、大好きな作曲家だというシューベルト。中でも彼にとって特別な作品である最晩年の3つのソナタから、第19番を演奏する。実はこの作品、コンクール前から決まっていた今年1月の彩の国さいたま芸術劇場公演でも弾いている。優勝者ツアーで多忙な中オリンを大事に想い愛して切磋琢磨し時を刻んできたのかがよくわかる、ヴァイオリニスト作曲によるヴァイオリンの名曲を沢山弾きたい」(公演チラシより)との想いに拠っている。確かにここには、ヴィターリ、パガニーニ、サラサーテ、エルガー、イザイ、ドルドラ、クライスラーという、偉大なコンポーザー=ヴァイオリニストの作品が並んでいる。メロディアスな曲も技巧的な曲もある。クライスラーの作品、特に彼のクラシカルな曲の多さも特徴的だ。 最近温かな表情や余情を加えている松田の演奏で、こうした楽曲を聴くのは、まさに幸せな時間。そのナチュラルな艶やかさに、たっぷりと浸りたい。準備をしたはずだが、作曲家の心に寄り添う美しい演奏だった。しかし同時に、さらに弾き込んだ状態を聴いてみたいと思ったものだが、それが今度の公演で叶う。 コンクールでも高く評価された「24のプレリュード」については、とにかく生で聴いてみてほしい。清らかなピアノで感情の振れ幅の大きな音楽を奏で、ショパンの壮大な宇宙を描き出す。 コンクール後に決まった日本でのソロ・リサイタルは、実は今度が初めて。大ホールのステージに立つ新星は、一段と成熟を深め、想像を超える音楽を聴かせてくれるだろう。©Shigeto Imura©Masayuki Nakajima12/10(土)14:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp

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