eぶらあぼ 2016.11月号
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66藤井一興 ピアノリサイタル 音楽遺産~受け継がれる感性~11/9(水)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu藤井一興(ピアノ)偉大なる美の感性を受け継いで取材・文:伊藤制子Interview ソロ、アンサンブル・ピアニストとして活躍し、近年はコンスタントに新作も発表している藤井一興が、11月に浜離宮朝日ホールで、チェロの横坂源との共演も交えたリサイタルを開催する。テーマは『音楽遺産~受け継がれる感性~』。藤井がすでに自家薬籠中に収めているフランス近現代の作品を中心にプログラムが組まれた。 「プログラム最初の曲は私の新作『金色堂のテトラコルド』の世界初演。素晴らしい才能をお持ちで、選りすぐりの名器を使われている若手チェリストの横坂源さんとのデュオの作品です。均整のとれたプロポーションで完璧な美しさをもつ世界遺産の中尊寺金色堂のイメージがもとになっており、テトラコルド(4つの音による音列)で作曲しました」 平泉の壮麗な美の世界が、リサイタルを通じて、ドビュッシー、メシアン、ブーレーズらの作品につながっていく。 「ドビュッシー作品では『版画』をプログラム最後に据えました。〈塔〉〈グラナダの夕暮れ〉〈雨の庭〉の3曲は、それぞれ中国、スペイン、フランスのイメージを喚起しており、私が描いた中尊寺の世界との違いも楽しんでいただけると思います」 パリ音楽院留学時代、メシアンから薫陶を受けたことでも知られる藤井。 「今回はメシアン先生の作品から『鳥のカタログ』第2番〈キガシラコウライウグイス〉を取り上げます。フランスにしか生息していない珍しい鳥で、黄金に輝く美しさが特徴です。夕日を浴びて心地よくさえずっている鳥の姿がとても官能的に描かれた名作です」 恩師メシアンを通じ、今年他界したブーレーズに紹介され、ブーレーズに自作を指揮してもらったのは鮮烈な思い出だという。 「彼が振ると、これが本当に自分の曲かと思うほど素晴らしく響いたので、とても驚きました。彼は3曲のピアノ・ソナタを書いていますが、私が一番好きなのは今回弾く第1番です。これまで何度も弾いていますが、抽象的でモダンな世界の中にブーレーズらしさが一番自然に表現されていると思います」 今回の使用ピアノはYAMAHA CFX。 「浜離宮朝日ホールは多彩な響きの違いもよく聞き取れるホールであり、CFXは繊細な音色を弾くのに適しています。ピアノ技術者の鈴木俊郎さんがホールの良さも生かしてピアノを仕上げてくださるので、リサイタルのテーマである音楽遺産の魅力を最大限表現できれば嬉しいです」11/30(水)19:00 王子ホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp阿久津麻美(ソプラノ)& イェルク・デームス(ピアノ)希少な美声の持ち主と巨匠との共演文:笹田和人イェルク・デームス阿久津麻美©YOSHINOBU FUKAYA/aura.Y2  「カラスやテバルディが持っていた親密さと暖かみのある声を維持している」。オーストリア伝統のピアニズムを受け継ぐ巨匠イェルク・デームスがこう絶賛するのが、ソプラノの阿久津麻美の歌声。東京芸大に学び、リサイタル活動や宗教作品のソリストとして秀演を重ねる一方、合唱団のヴォイストレーナーとして指導にも取り組んでいる。「さらに上級クラスで、勉強してみないか」。エリー・アーメリンクのレッスンを受ける彼女の声を耳にして、声を掛けたのは、デームスの方からだった。 そして、自然と音楽に浸る中、さらなる飛躍を遂げた阿久津。「恩返しのつもりで、臨みたい」と語る、巨匠とのリートの夕べ。前半ではシューマン「女の愛と生涯」を軸に、モーツァルト、ショーソン、ドビュッシーと歌い、デームスがソロでシューマン「子供の情景」を添える。そして、後半は「万霊節」などR.シュトラウスの名歌、山田耕筰「鐘が鳴ります」、J.シュトラウスⅡ「春の声」に加えて、「愛の歌」などデームスの自作も披露する。©Norikatsu Aida

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