eぶらあぼ 2016.11月号
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61ホセ・カレーラス(テノール) スピリット・オブ・クリスマスバースデイとクリスマスをカレーラスと共に祝う文:東端哲也『ON-MYAKU 2016 ̶see/do/be tone̶』音・ダンス・映像が高度に融合文:乗越たかお12/4(日)19:00 サントリーホール問 ビザビジョン03-5778-3403他公演11/30(水) 愛知県芸術劇場 コンサートホール(中京テレビ事業052-957-3333)11/6(日)15:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール問 愛知県芸術劇場052-971-5609『ON-MYAKU 2016』特設サイト http://on-myaku.com 1946年12月5日にスペインはカタルーニャ州のバルセロナで生まれ、1958年に世界屈指の名門オペラハウスである地元のリセウ大劇場に子役デビューを果たしてから、70年代には人気テナーとして頭角を現し、その後はスター街道をまっしぐら。87年に白血病の診断を受け、回復の可能性10パーセントと宣言されるも奇跡的に生還。歌手のキャリアも復活させ、90年代には「3大テノール」のひとりとして世界の音楽シーンを席巻したカレーラス。 その後も活躍を続け、バロックから現代音楽までレパートリーを広げながら、いくつになっても青年のようなひたむきさを感じさせるキャラクターで相変わらずの美声を披露。一方ではライフワークとして自身の名前を冠した「国際白血病財団」の活動にも余念がない。 今年も来日公演が控えているが、今 現代音楽の珠玉の作品の演奏に、最先端の映像とダンスがリアルタイムに対応し、今年1月にかつてない舞台を創り出したのが『ON-MYAKU』である。コンテンポラリー・ダンスの白井剛、ピアニストの中川賢一、ビジュアルアーティスト・プログラマーの堀井哲史(ライゾマティクス)という各界を代表する3人が顔を合わせた。 ジョン・ケージやヤニス・クセナキス、リュック・フェラーリといった現代音楽の巨匠達の作品が中川によって次々に演奏される。それを堀井は様々なデバイスで取り込み、データ化するわけだ。たとえばMIDIピアノで、打鍵のみならずその強弱までをも読み取る。またダンサーの白井にも腕にセンサーをつけさせ、筋電・加速度・傾き・ジャイロ等のデータを瞬時に読み取る等々。これ以外回のリサイタルは彼の記念すべき70歳の誕生日の前日に開催されるとあって、既に日本中のファンが色めき立っていることだろう。予定されているプログラムは、アルバレスの〈祈り〉やマスカーニの〈アヴェ・マリア〉、ストラデッラの〈ピエタ・シニョーレ〉など「スピリット・オブ・クリスマス」のテーマに相応しい聖なる歌が中心。ピアノは89年以来、世界中で伴奏を務めている盟友ロレンツォ・バヴァーイだ。バルセロナ・オリンにも様々なデバイスから得られたデータを映像に即応させていく。 たとえば初演時にはスティーブ・ライヒの「ピアノ・フェイズ」を使った。ミニマルなフレーズに合わせ、白井は数秒遅れて表示される自分自身の残像と踊ったのである。「過去」と踊っている「現在」のダンスは数秒後の「未来」に供される。3つの時制が同時に存在しているダンスを創り出してみせた。 技術を見せつけるのではなく、いかにそれぞれが舞台芸術に溶け込んで機能しているかが肝要なのだ。これは数少ない成功例といえる。初演の公演中でさえ様々なアイディアが盛りこまれ続けた本作。再演でどれだけ成長していることか、じつに楽しみである。ピック開会式でも披露されたカタロニア民謡〈鳥の歌〉など、カレーラスの出自にまつわる選曲もバースデイ・イヴの夜を盛り上げるに違いない。写真提供:東京文化会館 ©bozzo
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