eぶらあぼ 2016.11月号
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51ナタリー・シュトゥッツマン(指揮) 水戸室内管弦楽団世紀を超えた3名曲の繋がりが明らかに文:江藤光紀新国立劇場バレエ団『ヴァレンタイン・バレエ』多彩なバレエのエッセンスを凝縮文:守山実花10/29(土)18:30、10/30(日)14:00 水戸芸術館コンサートホールATM問 水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 http://www.arttowermito.or.jp2017.2/17(金)19:00、2/18(土)14:00 新国立劇場オペラパレス問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/ballet 水戸室内管弦楽団の10月定期では、ナタリー・シュトゥッツマンがタクトを取る。コントラルト歌手として著名なシュトゥッツマンだが、近年は指揮者としてもなじみの顔になってきた。もともと指揮への関心は高く、歌手の地位を確立した後に積年の夢の実現に乗り出したのだが、道を開いてくれたのが小澤征爾。自らアドバイスをするだけでなく、サロネンやラトルらを指導したことで知られるフィンランドの名指揮者ヨルマ・パヌラを紹介した。その後、彼女はオルフェオ55という室内楽団を創立、順調にキャリアを重ね、現在は歌手・指揮者両面で活躍している。 90年代から歌手として3回、指揮者として1回登場しているシュトゥッツマンは、水戸室内管にとってもゆかりのアーティスト。実は彼女が舞台で初めて指揮したのも同団(2008年定期)で、その時の経験がきっかけとなって指揮 来年2月に新国立劇場バレエ団が『ヴァレンタイン・バレエ』を開催し、定番作品から、新たなレパートリーまで、3部構成でさまざまな作品を上演する。 第1部は、プリンシパル、ソリスト、群舞がチャイコフスキー「管弦楽組曲第3番 ト長調」第4曲を踊る『テーマとヴァリエーション』。舞台に広がり次々と展開していくフォーメーションの妙やダンサーたちの一体感が魅力の作品、オペラ・グラスはしまい、舞台全体を観て欲しい。 プリンシパル、ソリストの妙技を楽しめるのが第2部、3つのパ・ド・ドゥが上演される。注目は、今回はじめて新国立劇場で披露される『ソワレ・ド・バレエ』、深川秀夫の振付作品だ。グラズノフの「四季」にのせ、繊細でロマンティックな情感を踊る。派手な技巧が飛び出すわけではないが、ダンサーには音楽性、表現力、精緻なテクニックが求められる。17日に踊るのは、この作品を得意とする米沢唯、奥村康祐。洗練されたダンスを見せてくれるだろう。18日は、今シーズン加入し、次々と主要な役にキャ者の道に飛び込んでいったという。最強メンバーからなる精鋭部隊でもあるこの楽団が、再度彼女を指揮者として呼び寄せたのだがら、その才能は確かなものだ。 声楽出身だけあって、旋律をしっかりと歌わせ、バランスの取れたドライブを見せる。古楽から近代まで、オーケストラの大曲からオペラまで、レパートリーは幅広い。今回のプログラムは18世紀から20世紀までそれぞれの世紀の交響曲というコンセプトで構成されているが、モーツァルトの交響曲第25番、プロコフィエフの古典交響曲、そしてビゼーの交響曲 ハ長調とメロディアスな曲が並んでいるのもうなずけよう。水戸芸術館の700席の贅沢なATMホールで綺麗に響く選曲でもある。ストされている池田理沙子と、井澤駿のペア。若い二人はこの作品をどう表現するのだろうか。スピード感たっぷりの『タランテラ』、さらに日替わりで『ドン・キホーテ』、『白鳥の湖』から華やかで極め付きのパ・ド・ドゥも踊られる。 そして第3部は、男性ダンサーのみの作品『トロイ・ゲーム』。体力の限界に挑みながら、そんな素振りを見せることなく、コミカルなダンスで笑わせる異色作。カーテンコールまでが作品の一部なので、最後までお見逃し無きように!ナタリー・シュトゥッツマン ©Simon Fowler『テーマとヴァリエーション』より ©The George Balanchine Trust 撮影:鹿摩隆司

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