eぶらあぼ 2016.11月号
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5011/7(月)19:00 東京文化会館(小)問 ヒラサ・オフィス03-5429-2399/音楽への道 CEM 075-351-5004他公演11/3(木・祝)宝塚ベガ・ホール、11/4(金)長岡京記念文化会館、11/5(土)松江/プラバホール問 音楽への道 CEM 075-351-5004 http://www.musiccem.org森 悠子(長岡京室内アンサンブル音楽監督/ヴァイオリン)メンバー全員が「気」を感じあって弾いているんです取材・文:山田治生Interview ヴァイオリニストの森悠子率いる長岡京室内アンサンブルが結成20年を迎え、宝塚、長岡京、松江、東京を巡るツアーを行う。曲は、チャイコフスキーの「弦楽セレナード」、ヴィヴァルディの「四季」、グリーグの「ホルベルク組曲」。 「曲目はオーソドックスですが、毎回、新しいことに挑戦して、今までどおりということはまずありません。演奏するたびに違うのです。2014年に東京文化会館でヴィヴァルディの〈春〉を演奏したときには、通奏低音にタンブリンを入れて、大きな反響がありました。私は演奏で“安定”してしまうことは罪だと思います。不安定の中から音楽をつくり上げる方が楽しい。だから私は練習の際に音楽づくりをあえて仕上げません。仕上げるのは本番だけ」 独自のアンサンブルを生み出す秘訣について。 「私はこのアンサンブルを若いメンバーにとっての修行の場としてやってきました。塾のようなものですね。私は弾き振りをしているのではありません。メンバー全員が同等なんです。自主性が大切なんですね。指揮者がいなくても、お互いが見えなくても、『気(呼吸)』を感じあってアンサンブルを行っています。『気』の感覚って日本人ならわかるのです。今回の『四季』も新しい演奏になると思います。プログラムに『ホルベルク』を加えましたが、『ホルベルク』はもともとピアノ曲。聴いたことのない『ホルベルク』をやりたいですね」 20年のなかで特に印象に残っている曲や演奏会とは。 「ヒナステラの『弦楽合奏のための協奏曲』ですね。難曲中の難曲で、指揮者なしでは不可能と思っていました。でも凄い演奏ができました。2度と弾けないでしょうね。それから、2013年の東京・春・音楽祭のバレエ公演で、東京文化会館の舞台に3メートルの櫓を立てて、その上でストラヴィンスキーの『ミューズを率いるアポロ』を弾いたこと。まるで夜空から音楽が降り注ぐような光景だったと思います。16歳の頃からの夢が何十年も経って実現したのです。フランスでは、ナントのラ・フォル・ジュルネにも出演しましたし、お菓子の名前の語源であるサブレという街でも演奏会をしました。シカゴでは、フランク・ロイド・ライト設計によるユニティ・テンプルで弾いたことが忘れられません」 20周年を越えて、長岡京室内アンサンブルの活動は発展を続ける。 「来年2月には、大阪と京都で、高木和弘さんのソロでメンデルスゾーンのニ短調のヴァイオリン協奏曲を演奏します。私の最後の夢は、モーツァルトの初期の交響曲です。指揮者なしでもできる初期の交響曲をオーボエとホルンも加えて本気でやりたい」11/25(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp山形由美(フルート) ~パリの風にのって~デビュー30周年記念リサイタル2つの宝が融合した、記念イヤーの贈り物文:柴田克彦 Photo:Takuya Okamoto 踊りにフルートはよく似合う─思わずそう感じてしまうのが、山形由美のデビュー30周年記念CD『Eternally~永遠のジゼル』(イマジンベストコレクション)。これは、少女時代バレエに勤しみ、今も「フルートとバレエは大きな宝」と語る彼女の、双方に寄せる思いが融合した素敵なアルバムだ。 そして山形は今秋、30周年ツアーを行い、パリや東京など各地で収録曲を披露する(東京公演の共演はCDと同じくピアノの菅野潤)。プログラムは、彼女が特に愛する「ジゼル」をはじめ、リュリ、グラナドス、バルトーク、チャイコフスキー等のバレエや踊りにまつわる、チャーミングで哀感も漂う佳品たち。委嘱作の加藤昌則「フルートとピアノのためのカプリス~旅する笛~」も、日本の笛や祭りをイメージした興味深い1曲だ。 山形は長きにわたって幅広い層に愛されてきた。それは、彼女でしか表現し得ない“親密な気品”が、皆の心を魅了するからであろう。今回は、30年の年輪と現在の心象を映した演奏を、ぜひライヴで味わいたい。慈しむような情感がこもったその温かな音楽は、きっと我々を幸せな気持ちにさせてくれる。

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