eぶらあぼ 2016.11月号
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48マルクス・シュテンツ(指揮) 読売日本交響楽団 「第九」確固としたベートーヴェン像を期待文:飯尾洋一高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団呼応しあう2大作曲家の“宇宙”文:オヤマダアツシ12/17(土)、12/25(日)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール 12/18(日)14:00 横浜みなとみらいホール12/20(火)、12/21(水)各日19:00 サントリーホール 12/22(木)19:00 フェスティバルホール12/26(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp第303回 定期演奏会2017.1/13(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp 今年も「第九」のシーズンが近づいてきた。12月になると毎年あらゆるオーケストラが「第九」を演奏するが、聴く側にとって大きな楽しみとなるのが、さまざまな指揮者との出会い。どこの楽団も、この人でこそ「第九」を、と思うような実力者を呼んでくる。一方、指揮者の側にとっても、欧米では演奏機会の限られる「第九」を振れるのは貴重な機会。そんな両者の想いがぶつかり合って、ときには予想もしなかった印象的な演奏が飛び出すのが「第九」の魅力ではないだろうか。 今年、読響の「第九」を指揮するのは、ドイツのマルクス・シュテンツ。現在オランダ放送フィルの首席指揮者やボルティモア交響楽団の首席客演指揮者といったポストにある。録音では首席指 9月に通算300回目の定期演奏会を行い、2016年の後半はベルリオーズの作品を連続して取り上げることによりオーケストラとしての個性をアピールした、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。17年の幕開けに選ばれた作品はベートーヴェン、そして武満徹という2人の作曲家であり、指揮台へ登場する常任指揮者、高関健の審美眼をじっくりと味わえそうな2曲でもある。 ベートーヴェンの「英雄」交響曲は、何度もコンサートで聴いたという方が多いだろう。それだけに新鮮で発見にあふれた演奏を期待するのは常だが、知っている曲だからこそ斬新な音が聴けたときの喜びも大きい。楽譜の精査には定評がある高関と、がっちりと引き締まったサウンドになってきている東京シティ・フィルなら、30代前半の覇気に満ちたベートーヴェン・サウンドを生き生きと提示してくれるだろう。 ソリストとして登場するチェリストの揮者を務めたケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団とのマーラーの交響曲全集などで話題を呼んだ。2010年にはN響でマーラーの「復活」を振って、スケールの大きな演奏が好評を博している。では読響との間にはどのような化学反応が起きるのだろうか。本格派の王道を行くのか、大胆なアプローチを披露してくれるのか。実績豊富な指揮者だけに、確固としたベートーヴェン像を提示してくれるはずである。 さらに指揮者に加えて「第九」で大切なのが合唱。定評ある新国立劇場合唱団が共演する。最高水準の合唱団が歌う「歓喜の歌」はどんな喜びをもたらしてくれるのだろうか。アガ・ミコライ(ソプラノ)、清水華澄(メゾソプラノ)、デイヴィッド・バット・フィリップ(テノー宮田大は、武満徹の協奏作品「オリオンとプレアデス」に初めて取り組む。ドヴォルザークやエルガーほかスタンダードな作品だけではなく、外山雄三や尾高尚忠らによるチェロ協奏曲も演奏し、その表現力が注目されている宮ル)、妻屋秀和(バリトン)と強力な独唱陣ともども、役者がそろった。田。約25分間にわたって繰り広げられる音の瞬きと運動、そして宇宙のコラール。学生時代より武満の音楽に接していた高関との共演により、生まれてくる音楽はより深みを増すだろうと思うとますます楽しみになる。マルクス・シュテンツ ©Molina Visuals宮田 大高関 健 ©Masahide Sato
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