eぶらあぼ 2016.11月号
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47©Concerto Windersteinゲルハルト・オピッツ シューマン × ブラームス連続演奏会 第2回12/16(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831http://www.pacific-concert.co.jpゲルハルト・オピッツ(ピアノ)シューマンとブラームスの異なる創造性に焦点を当てる取材・文:高坂はる香Interview ドイツものの名手として知られる、ゲルハルト・オピッツ。1953年バイエルン州に生まれ、若き日にヴィルヘルム・ケンプの薫陶をうけたピアニストで、これまで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲やシューベルトの連続演奏会などを通じてドイツ音楽の真髄を追求してきた。そんな彼が、昨年から新しいテーマによる連続演奏会に取り組んでいる。 「ベートーヴェンとシューベルトのツィクルスを終えたところで、自然と、この後に続けるのはシューマンかブラームスだと思いました。全4回の演奏会で二人の作品のハイライトを紹介し、ベートーヴェンから受けた影響、両者の創造性の違いを比較したいと思います」 シリーズ第2回となる今年の公演で取り上げるのは、シューマンからは「森の情景」とピアノ・ソナタ第1番、ブラームスからは「3つの間奏曲 op.117」、そしてシューマンがブラームスの才能を絶賛した評論「新しい道」で紹介したことで知られる、ピアノ・ソナタ第1番。小品と大曲、初期と晩年の作品がバランスよく選ばれている。 「二人のキャラクターは大きく異なりますが、どちらも大曲と小品、両方において才能を発揮した作曲家です。両者が、ベートーヴェンから続く道を異なる方法で伸ばしていったことも感じていただけると思います。シューマンは、厳格な伝統に縛られすぎず、冒険し、自由を求める形でその精神を受け継いだ。一方のブラームスは、古典的な様式や構造を大切にして過度な冒険は避け、詩情に満ちた音楽を書きました。二人とも、芸術的な自由を求める勇気を持ちながら、同時にフォルムや構造といった音楽の根本を成すものとの接点を忘れていない。例えば飛行機が空を飛ぶように、ファンタジーもどこまでも高く飛んでいくことができますが、どこから出発し、どこに向かっているのかを常に意識していることは、やはり大切なのです。彼らの作品は、だからこそ説得力のあるファンタジーとなっているのです」 オピッツはこれまで、ドイツものに限らずさまざまなレパートリーに取り組んできてはいるが、やはり歳を重ねるにつれ、「ベートーヴェンから続く系譜にある音楽がどんどん自分に近い存在となってきた」という。 「シューマンもブラームスも、ベートーヴェンの音楽的な後継者を生む重要な役割を果たした作曲家です。シリーズを通して、ベートーヴェンからドイツのその後の音楽家に伝統がどのように受け継がれていったかを示したいと思います」 自らもその流れの線上にいて、伝統を継承する存在であるオピッツ。円熟期を迎え、より深まった作曲家への共感を披露してくれることだろう。11/23(水・祝)16:30 八ヶ岳高原音楽堂問 八ヶ岳高原ロッジ0267-98-2131http://www.yatsugatake.co.jpラデク・バボラーク with バボラーク・アンサンブルホルンと弦楽アンサンブルの夕べ名作の究極の名奏に浸る極上の至福文:柴田克彦バボラーク・アンサンブル(中央:ラデク・バボラーク) “美しく柔らかな音色”“完璧な演奏”などというレベルを遥かに超えた超絶ホルン奏者バボラーク。同楽器の難しさを微塵も感じさせないその演奏は、変幻自在でチャーミングでコクがある。今回は、この歴史的名手が、モーツァルトのホルン協奏曲全4曲とホルン五重奏曲を一挙に聴かせる。これら5曲は天才作曲家が親友ロイトゲープのために書いたホルンのバイブルたる名作。ただし、まとめての生演奏は編成や構成上不可能に近い。その“究極のホルン・コンサート”が、協奏曲を室内楽版で演奏するがゆえに可能となった。メンバーは長年彼と共演してきた精鋭揃い。今回のモーツァルト作品もCDをリリースしたばかりなので、練り上げられたアンサンブルを聴くことができる。ベルリン・フィルの首席奏者を辞めてソロ活動に専念し、指揮活動も増えて音楽の幅を広げているバボラークの至高のソロと共に、協奏曲の室内楽的な綾と愉悦も新鮮な当公演。自然の美しさ深まる晩秋に八ヶ岳高原音楽堂で聴けば、最上の至福を味わえること間違いなしだ。

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