eぶらあぼ 2016.11月号
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46横浜みなとみらいホール 小ホール・オペラシリーズ Ⅱ プーランク:オペラ《人間の声》ベテランと新鋭が取り組む難曲モノ・オペラ文:江藤光紀中村紘子 メモリアル・コンサート多岐にわたる偉大な業績を讃えて文:長井進之介11/16(水)14:00 19:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh12/11(日)14:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp アロー、アロー(もしもし、もしもし)…舞台には自室の電話に向かって何度も叫ぶ女が一人。受話器の向こうには、別れたばかりの男がいる。千々に乱れる思いそのままに電話は混線し、女の精神も混乱していく。 《人間の声》は19世紀の華やかなオペラとは対照的に、孤独な現代人の生きざまを、滑稽なまでに赤裸々に描き出す。コクトーのトリッキーな台本を、プーランクが軽妙洒脱なセンスで音楽化した名作だが、歌手にとっては過酷だ。何せ40分の上演の全てを一人で演じなければならない。歌うだけではダメだ。見栄、懇願、怒り、切なさ——女の性(さが)を掘り下げつつ、電話口の向こうの男の姿までをも観客にイメージさせなければ成功と言えない。あらゆる感覚・感性をフル稼働して臨まなければならないのである。 今回のみなとみらいの企画は、さらに歌手泣かせ。マチネ(14:00)とソワ 世界的な演奏活動、軽妙かつ美しい言葉で綴る文筆活動、さらに若い才能を次々と発掘して育成した教育活動と、多方面から日本のピアノ界を発展させた中村紘子。演奏会や講演などが予定されていたが、今年の7月に惜しまれつつ逝去。 彼女の偉大な功績を讃え、本来中村のリサイタルが予定されていた12月11日に、ゆかりの演奏家が集い、メモリアル・コンサートが開催される。出演は、幼い頃より中村にその才能を認められ、チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で日本人、また女性としレ(19:00)の1日2公演だが、若手とベテラン、それぞれ歌手が異なり、両方の聴き比べも可能なのだ。 この恐ろしい企画に登場する“猛者”をご紹介しよう。マチネの盛田麻央はパリの音楽院を優秀な成績で修了した若手で、二期会会員としても今後が期待される新星。フランス語も現地仕込みだ。ソワレの佐藤美枝子は藤原歌劇団の公演などでも重要な役を務める、いわずと知れたベテランだ。アプローチも対照的なものになるのではないか。ても初めての第1位を獲得した上原彩子、中村が審査員を務めたショパン国際コンクールで歴代日本人として最年少入賞を果たした横山幸雄、中村が音楽監督を務めた浜松国際ピアノアカデミーでその才能を大いに認められ、いまや国際的ピアニストとなった河村尚子、常に第一線で活躍し続けるヴァイオリニスト漆原啓子、そして名実ともに日本を代表するチェリストである堤剛。 プログラムは、亡くなったその日に楽 中村敬一の音楽を踏まえた演出が二人の個性をどう引き出し、作品の精神をどう表現するか。ピアノは歌手の呼吸を熟知する服部容子。譜が中村の自宅のピアノに置かれていたモーツァルトの「ピアノ・ソナタ K310」(演奏:上原)をはじめ、中村が生涯愛した作曲家であるショパンの作品からは、「ピアノ・ソナタ第2番」(演奏:横山)。そして河村、漆原、堤によって、故人を讃えるに相応しいチャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」。 日本の音楽界を支え続けた中村から、彼女が愛した音楽家達へとバトンがつながれていく瞬間を見届けたい。佐藤美枝子 ©武藤 章盛田麻央左より:中村紘子 ©Hiroshi Takaoka/上原彩子 ©三浦興一/横山幸雄 ©ミューズエンターテインメント/河村尚子 ©Ariga Terasawa/漆原啓子 ©篠原栄治/堤 剛 ©鍋島徳恭

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