eぶらあぼ 2016.11月号
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194CD+DVDCDCDSACDエリオトロープ/寺田 愛永遠のショパン/仲道郁代J.S.バッハ:無伴奏ヴィオラ(チェロ)組曲 Vol.1/ヴォルフガング・ヴェルファーモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集 Vol.2/鈴木理恵子&若林 顕イベール:戯れ(ソナチネ)/ピエルネ:セレナード、ソナタ/ドビュッシー:夢/フォーレ:コンクール用小品、シシリエンヌ/ゴーベール:子守唄、ソナタ/ルーセル:アリア/ボザ:アリア/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ 他寺田 愛(フルート)瀬尾和紀(ピアノ)ショパン:マズルカ第13番、幻想即興曲、小犬のワルツ、雨だれ、別れの曲、革命、夜想曲第2番・第20番、バラード第1番、英雄ポロネーズ 他仲道郁代(ピアノ)J.S.バッハ:無伴奏ヴィオラ(チェロ)組曲第1番~第3番ヴォルフガング・ヴェルファー(ヴィオラ)モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.305・K.481・K.296・K.378鈴木理恵子(ヴァイオリン)若林 顕(ピアノ)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9005 ¥2800+税ソニーミュージックSICC9002-3(CD+DVD) ¥2778+税ナミ・レコードWWCC-7820 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCL-00604 ¥3200+税フランスで学んだ寺田愛が、主に20世紀前半に書かれたフルートの佳作を集めた。録音にはブレスが明瞭に入っている。フレージングが分かるだけでなく、この数々の美しいメロディが、そもそも人間の息が化けることで生み出されているのだという当たり前のことを再認識させられた。その音はまっすぐに伸び、解釈においても小細工は弄せず、ヴィブラートで薄く色づけしつつ堂々と歌う。同じ傾向の曲をこれだけ集めても、飽きずにすっきりと聴けるのは、寺田のパフォーマンスの爽やかな身体性が録音でも的確に捉えられているからだろう。瀬尾和紀のピアノもこれにダイナミズムを持って応えている。(江藤光紀)誰の耳にも馴染みあるショパンの名曲。だがそれらはパワフルさを追求した現代のピアノで弾かれた音像に違いない。ショパンの愛した繊細なプレイエルの音色で、それらと新たに出会わせてくれるのが仲道郁代の新譜だ。素朴だが奥行きを感じさせる音色。揺れる光と影を思わせる響き。仲道自身が所有する1842年製の楽器は、仲道のしなやかなタッチに応え、たっぷりと15曲を聴かせる。ボーナストラックで4曲のモダンピアノでの演奏、さらに1840年製の楽器で3曲を奏するDVD付き。視覚的にも美しい当時の楽器で、あらためて仲道のショパンを堪能したい。(飯田有抄)「チェリストにとっての旧約聖書」と呼ばれる、バッハの6つの無伴奏組曲。それは、「全ての弦楽器奏者にとっての」と言い換えて良いのかもしれない。巨匠ザハール・ブロン門下唯一のヴィオリストで、ウィーン・フィルでも活躍したオーストリアの名手による、推進力に満ちたパッションと、静謐さが同居する快演。チェロならば分散和音で処理せざるを得ないような重音を、楽譜通りにきっちり響かせたり、ルバートが予想される場面でも、あえてそれを排したりと、機動力に勝るヴィオラの特性を生かした独自の表現が、そこここに。「この楽器で演ること」の意義が、浮き彫りとなる。 (笹田和人)鈴木理恵子と若林顕夫妻のモーツァルトのソナタ集第2弾。「ソナタ K.296」冒頭の主題やパッセージから繊細な心の動きが伝わってきて、爽やかでとてもきれい。鈴木のヴァイオリンはイントネーションが清潔で、モーツァルトにピッタリ。細かい楽句のさりげない表情が美しい。若林のピアノは煌めきがあり、鮮烈な冴えと躍動感が魅力だ。「K.378」でも広がりのある大きな世界を捉えて聴かせる。展開部や緩徐楽章中間部の短調への転調もしみじみとして味がある。「K.481」の多彩な楽想の変化に対応する充実ぶり、緩徐楽章の2つの挿入句のヴァイオリンの美しさなど、申し分ない。(横原千史)

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