eぶらあぼ 2016.11月号
185/217

192CDCDSACDCDショスタコーヴィチ:交響曲第12番・第15番/インバル&都響Water Droplets―珠玉のデュオ名曲集―/印田千裕&印田陽介大田黒元雄のピアノ―100年の余韻―/青柳いづみこ&高橋悠治ウィーン、わが夢の町/田辺秀樹ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」・第15番エリアフ・インバル(指揮)東京都交響楽団ハルヴォルセン:ヘンデルの主題によるパッサカリア/グリエール:8つの小品/ダンクラ:《魔弾の射手》の主題による二重奏曲/ロンベルク:《魔笛》の主題による変奏曲/バルトーク:ハンガリー民謡集/モンティ:チャルダッシュ/シベリウス:水滴 他印田千裕(ヴァイオリン)印田陽介(チェロ)グリーグ:春に寄す/ドビュッシー:小さな羊飼い/ゴダール:牧神/山田耕筰:若いパンとニンフ/マクダウェル:野ばらに寄す、秋に/スコット:魂の共感の庭/プロコフィエフ:束の間の幻影/ラヴェル:マ・メール・ロワ 他青柳いづみこ、高橋悠治(以上ピアノ)ヘルナルスの小さなカフェで、ウィーンへの挨拶、ワインはいいものだ、ランナーの調べ、ゲーテやシラーじゃないけれど、私のママはウィーン生まれ、ウィーン、わが夢の町 他田辺秀樹(ピアノ)収録:2011.12/20、サントリーホール, 2016.3/29、東京文化会館(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00605 ¥3200+税マリーコンツェルトMLKT-26001 ¥2500+税コジマ録音ALCD-7200 ¥2800+税N&F Co.,Ltd.MF-28501 ¥2800+税高評価が続くインバル&都響によるショスタコーヴィチ・シリーズの第4弾。今回も、インテンポで引き締まった構築と濃密かつ透徹したサウンドによる、峻烈な迫力と緊張感に充ちた名演が展開されている。12番はロシア革命云々を離れた明快な管弦楽曲、15番は謎めいた構成を離れた“オーケストラのための協奏曲”としての妙味満点。しかもその結果、楽曲に内包された凄みや深みが浮き彫りにされているのが素晴らしい。都響の機動力、特に15番の各ソロも見事だ。これらが20世紀後半の稀少な普遍的交響曲であることを知らしめる、万人にお勧めの一枚。(柴田克彦)印田千裕と陽介は姉弟デュオ。呼吸の合わせ方、リズム感などからは「合わせている」というよりも、いつの間にか寄り添っているような自然さを感じる。様々な魅力を持つが、音色の溶け合わせ方は特筆すべきものがある。千裕の奏でる華やかで広がりのある音が、陽介の包み込むようなあたたかい音と合わさることで、更に優雅な響きへと昇華されるのだ。特にダンクラの《魔弾の射手》とロンベルクの《魔笛》を扱った作品では、このデュオの掛け合いの妙や音色の魅力、更に散りばめられた難箇所を余裕で弾きこなす技巧の高さも堪能することができる。(長井進之介)100年以上の時を超え、味わい深い音色が冴え渡る。音楽評論家として戦前の音楽界をリードした大田黒元雄旧蔵の1900年製スタインウェイが、青柳いづみこと高橋悠治の洒脱な演奏で蘇った見事なアルバムだ。選曲も凝っている。1915年から17年に大田黒邸で開催された『ピアノの夕べ』で弾かれた曲を中心に選ばれている。英国の作曲家スコットやマクダウェル、さらにグリーグ、ゴダール、山田耕筰など多彩だ。青柳と高橋の連弾によるラヴェルの「マ・メール・ロワ」は白眉。同作はプロコフィエフが大田黒邸に初訪問した際、弾いてみせたゆかりの曲でもある。(伊藤制子)ぜひ、ワイングラスを片手に愉しみたい。誰よりも、弾き手自身が、それを望んでいるに違いないから。4年前まで一橋大学大学院で、ドイツ語や音楽文化論の教鞭を執っていた田辺。在職当時から首席ならぬ「酒席ピアニスト」として、“知る人ぞ知る”存在だったが、退任後は、時に本場ウィーンのカフェでも演奏を披露する日々を送る。当盤では、そんな彼が得意とする、19世紀後半〜20世紀前半に大衆から愛された歌「ウィーナーリート」やオペレッタからの名旋律を中心に披露。“音楽の街”独特の揺らぎと共に、なぜか日本人にも強い郷愁を抱かせる、名曲の数々が胸に染みる。(寺西 肇)

元のページ 

page 185

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です