eぶらあぼ 2016.11月号
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190CDCDCDSACDフランスをめぐって/石田多紀乃 原田 愛 ピアノ・デュオメモリーズ&ドリームズ―トロンボーン小品集/イアン・バウスフィールド「わがうた」「パリ旅情」/神野靖子&小原 孝コンヴィチュニー オイロディスク・レコーディングスドビュッシー:小組曲/ラヴェル:マ・メール・ロワ/フォーレ:ドリー/古曽志洋子:こねこのポール/シャブリエ(メサジェ編):狂詩曲「スペイン」石田多紀乃、原田 愛(以上ピアノ)エルガー:愛の挨拶/オジ:アダージョとロンド/ステッドマン=アレン:ウォーク・ウィズ・ミー/ジャン=バティスト・レイエ:ソナタ/ブラームス:ロマンス op.118-5・間奏曲 op.118-2/コルンゴルト:《死の都》よりマリエッタの歌・ピエロの歌 他イアン・バウスフィールド(トロンボーン)ジェイムズ・アレクサンダー(ピアノ)團 伊玖磨:歌曲集「わがうた」髙田三郎:歌曲集「パリ旅情」、くちなし山本正美:ねむの木の子守歌木下牧子:さびしいカシの木 他神野靖子(ソプラノ)小原 孝(ピアノ)ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(ノヴァーク版)/ワーグナー:ジークフリート牧歌/ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第2番/リスト:交響詩「前奏曲」フランツ・コンヴィチュニー(指揮)ウィーン交響楽団バンベルク交響楽団ナミ・レコードWWCC-7819 ¥2500+税カメラータ・トウキョウCMCD-28336 ¥2800+税ディスク クラシカ ジャパンDCJA-21036 ¥2500+税日本コロムビア/TOWER RECORDSTWSA-1031-2(2枚組) ¥4000+税東京芸大で作曲を専攻した原田愛と、ピアノを専攻した石田多紀乃が組むピアノ・デュオ。二人が選んだ作品はフランス近代連弾曲の3大傑作とも言える、ドビュッシーの「小組曲」、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」、フォーレの「ドリー」。おとぎ話のように彩り豊かなファンタジーの世界へと導かれたのちに出会うのは、なんと日本の猫! 古曽志洋子作曲の連弾組曲「こねこのポール」を初録音。親しみやすい曲想と、立体感に満ちた演奏が楽しい。そして圧巻はシャブリエの狂詩曲「スペイン」の連弾版。華やかで明るく情熱的。連弾の醍醐味を伝えてくれる演奏だ。(飯田有抄)2012年にウィーン・フィルのソロ奏者を辞した後、ソロや教育面で活躍する現代最高のトロンボーン奏者の一人、バウスフィールドの最新アルバム。ピアノや歌など多種多彩な楽曲のアレンジものを主体とした小品集である。彼は驚異的なテクニックをもった名手だが、ここではトロンボーンの“歌う”魅力が徹底的に追求されている。破格のスライド技術を駆使したナチュラルな歌い回しは、どれも惚れ惚れするほど。超絶技巧もさりげなく織り込まれたその陶酔的な演奏には、終始感嘆させられる。同楽器の潜在的魅力を浮上させた、広い層に聴いてほしい好ディスク。 (柴田克彦)第13回奏楽堂日本歌曲コンクールを制した実力派ソプラノ神野靖子が、普段から愛唱する日本の歌曲を丁寧に紡ぐ。凛とした空気と深い感情表現に満ちた團伊玖磨「わがうた」と、繊細な色調の絵画を観るような髙田三郎「パリ旅情」、2つの歌曲集を軸に、日本人なら誰もが知る名歌曲の数々。芳醇で包容力ある温かな歌声、一語一語の意味と響きが立ち上がって来るような日本語の美しさが、聴く者の心を捉える。パートナーは、即興演奏を披露するラジオ番組でもお馴染みの、ピアノの才人・小原孝。10年の共演歴があるだけに、神野の思い入れにそっと寄り添う、名サポートぶりを聴かせる。(笹田和人)オイロディスクのSACD化でコンヴィチュニーの名演が蘇った。ウィーン響との「ロマンティック」は、テンポに緩急を付ける古いスタイルながらオーケストラの美質をうまく引き出す。展開部やコーダの総奏では、武骨とはいえ、それ故ブルックナーらしい頂点形成を築き上げる。スケルツォや終楽章の第1主題や終結の頂点も同様で、オーケストラが一つになって熱い高揚を生み出す。「ジークフリート牧歌」もきれいだ。バンベルク響との「新世界」は、朴訥な表現だが、繊細な表情が明滅し、この団体がチェコからの移民ドイツ人で構成されたことを思い出させる共感ぶりが、随所で聴かれる。 (横原千史)

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