eぶらあぼ 2016.10月号
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90CD『ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 作品5、8つの小品 作品76』コジマ録音 ALCD-9149 ¥2800+税毛もう 翔しょうう宇(ピアノ)ブラームスの初期の作品は“風”、中期は“谷に咲く花”のようです取材・文:飯田有抄Interview 毛翔宇を知る人は、日本ではまだ多くないだろう。1973年北京生まれというから、今年で43歳。音楽学者の父、音楽院教師の母を持つ。中国では文化大革命とその終焉という混乱の折、同世代11/30(水)18:30 日経ホール問 日経ミューズサロン事務局03-3943-7066 http://www.nikkei-hall.com第454回 日経ミューズサロン チェコ少年合唱団“ボニ・プエリ” クリスマス・コンサートボヘミアが育んだ豊かなハーモニー文:笹田和人チェコ少年合唱団“ボニ・プエリ” 右上:パヴェル・ホラーク 「プラハの春」をはじめ、世界各地の音楽祭に招請されるなど国際的に活躍、音楽大国の伝統に根差す一方、ショーアップされたステージ創りでも、聴く者を魅了するチェコ少年合唱団“ボニ・プエリ”。芸術監督のパヴェル・ホラークに率いられて『日経ミューズサロン』に登場。豊かなハーモニーを聴かせる。 東ボヘミアの中心都市フラデツ・クラロヴェを拠点に、4~23歳の約350名の青少年で組織。変声期前の少年たちがソプラノとアルト、青年たちがテノールとバスを担当することで、清冽な上声部と堅固な低音部の両立を可能に。2011年には母国でチャリティコンサートを行い、その収益をかねてから交流のあった宮城県多賀城市の子供たちへ寄付するなど、東日本大震災の被災地の支援にも積極的に関わっている。3年ぶり7回目の来日となる今回の公演では、震災復興応援ソングの「花は咲く」、バッハやカッチーニの「アヴェ・マリア」、スメタナ「モルダウ」、チェコ民謡やクリスマス・キャロルなど、名曲の花束を届けてくれる。の子どもたちの大半は楽器など見たこともないという時代。毛は言わばエリート層に育ち、6歳からピアノを始めた。9歳で移り住んだ香港でデンマーク人ピアノ教師と出会い、天賦の才を伸ばしていった。 「音楽の道を目指したのは14歳。ただし学業の成績も良かったので、高校の校長からはアメリカのオバーリン大学で経済学と音楽の両方を学ぶように進められました。経済学を通じて理性的なものの見方を養えたことは良かったです。その後ジュリアード音楽院に進み、博士号を取得しました」 アメリカ、アジアを中心に演奏活動を行っており、日本でも2012年と14年に兵庫、東京、札幌でコンサートを行った。 「兵庫では、コンサートを終えてホテルに戻ると、聴衆の方からファックスでお手紙が届いていました。『ショパンその人が目の前にやって来たようで、ずっと涙していました』と。初めて聴いてくださった日本の方が、そんな温かい感想を寄せてくれたことにとても感動しました」と静かに語る。 毛のジェントルでシリアスな人柄は、発売されて間もない彼のブラームスのアルバム(コジマ録音)にそのまま聴き取ることができる。安定したテンポの中で、深みのある強いタッチ、優しく温かい音色を自在に使って詩情を漂わせる。選曲は、二十歳のブラームスが書いた「ピアノ・ソナタ第3番」、そして「8つの小品 op.76」。 「二十歳で書かれたソナタは、感情にまかせて理性を失わないよう、バランスを大切にして演奏しています。感情をコントロールしながら、深い穴を掘って行くような感じですね。一方、『8つの小品』は中期の作品です。ブラームスの小品集というと晩年のop.116からop.119までの4つがよく知られていますが、同じ感覚で中期のop.76を捉えるとしたら、それは色眼鏡を掛けて聴くようなもの。僕の理解では、初期のブラームス作品は風のようで、晩年の作品は静かな湖。そして中期の作品は谷に咲く花のようです。このop.76の小品には、ブラームスの生命への愛情がストレートに表現されています」 抒情的であり、どこか理知的でもある毛翔宇のブラームス。その音楽作りに、ぜひゆったりと耳を澄ませてほしい。
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