eぶらあぼ 2016.10月号
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79たところがうまく弾けるようになったので、どうしてもトリに演奏したくて。今思えば、倒れてから復帰するまでの2年間は僕にとって必要な時間でした。いろいろなことを考えていたと思うし、なにより、何もできないことへの飢えがありましたね」 尽きることのない音楽への渇望と冒険心が、舘野を動かし続ける。これからも型にはまらぬ活動で我々を驚かせてくれることだろう。©武藤 章舘野 泉 傘寿記念コンサート11/10(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演10/30(日)南相馬市民文化会館(0244-25-2763)舘野 泉(ピアノ)傘寿の記念に4つの協奏曲を1晩で!取材・文:高坂はる香Interview 自身の80歳を記念する演奏会で、新たなレパートリー2作品を含む4つの協奏曲を一夜で弾く演奏家は、世界を見回してもなかなかいないだろう(共演:高関健&東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)。舘野泉はそういう大変なことに楽しそうに挑戦し、さらりと成し遂げてしまう人だ。 「弾きたい曲を選んだら4つになってしまっただけで、大変なことをするつもりはないんです(笑)。普段取り上げるのが難しい作品は、記念演奏会の機会にぜひ演奏したいと思って」 その一つが、ヒンデミットの「管弦楽付きピアノ音楽」。ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲と同じく、戦争で右手を失ったヴィトゲンシュタインの依頼で1923年に書かれながら、約80年間演奏されることのなかった作品だ。 「2004年にドイツで初演された後、日本で演奏してほしいと楽譜をもらったのですが、引き受けてくれるプロの楽団がなかなかいませんでした。音がキラキラ輝いて生き生きと迫ってくる、すばらしい作品です。弾くにはすごくエネルギーが必要なんですけれどね」 この機会に演奏したいもう一曲は、50年前シベリウス・アカデミーで教え子だったシュタールが舘野のために書いた「オーケストラと左手のためのファンタスティック・ダンス」。特殊楽器が多用された、スケールの大きな新作だ。 「彼は14歳だった当時から、音楽が好きで仕方ないという感じの伝わってくる素直な学生でした。その後、長年ウィーン・フィルのヴァイオリニストをつとめ、ヨーロッパの良い伝統をギュッと掴んで生きてきた人です。時間をかけて書いた自信作というだけあって、とても内容が濃い。自由に飛躍するような音楽が魅力です」 その他、日本人作曲家の作品として池辺晋一郎のピアノ協奏曲第3番「西風によせて~左手のために」、また、左手のための最重要レパートリーといえるラヴェルの協奏曲を取り上げる。15年前に脳出血で倒れ、復帰の見通しがたたなかった頃、この曲を弾けばいいのでは、と勧められてくやしさを感じたこともあったという。 「僕はこの協奏曲が昔から好きだったのですが、40年前はなかなかオーケストラに取り上げてもらえなかった。でも左手のピアニストとして復帰してからは、もう40回近く演奏しましたよ。この数年で、今まで無理だと思っていバルトークの時代 その1 9/25(日)14:00、9/28(水)19:15バルトークの時代 その2 10/27(木)19:15、10/30(日)14:00近江楽堂(東京オペラシティ3F)問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 http://www.gregorio.jp/qc古典四重奏団 ムズカシイはおもしろい!! バルトークの時代 2016バルトークと彼の時代性が見えてくる文:林 昌英©藤本史昭 今年結成30年の古典四重奏団は、レクチャーを伴うコンサートを活動の柱のひとつに据えている。その代表的なシリーズが、この「ムズカシイはおもしろい!!」。ユニークなタイトルから、一見難解そうな曲でも怖くない、むしろ難しさにこそ核心に迫る面白さが詰まっている、というメッセージが伝わる。 今シリーズは「バルトークの時代」と題して、作曲当時の音楽界のトピックをテーマにレクチャーが行われ、 バルトークを1曲ずつと近代四重奏作品の名作を組み合わせる。「その1」は「牧神後」をテーマに、バルトーク第1番とドビュッシーの名品を。「その2」のテーマは「民族の血」で、同第2番とラヴェルの傑作を組み合わせる。毎回好評のチェロの田崎瑞博によるわかりやすいレクチャーと4人の研ぎ澄まされた実演で、ドビュッシーからバルトークまで多角的に俯瞰することで、バルトークの面白さばかりか、当時の音楽界の熱い息吹まで感じられよう。
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