eぶらあぼ 2016.10月号
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74高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第九特別演奏会 2016新しい視点で臨む精密な「第九」に期待文:オヤマダアツシ小林研一郎(指揮) 読売日本交響楽団コバケンとウィーンの巨匠との邂逅文:江藤光紀12/28(水)14:00 東京文化会館問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp第564回 定期演奏会11/24(木)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 毎年12月、在京オーケストラによる多くの「第九」コンサートがある中、おそらくトリを担っているのは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団だろう。今年も12月28日に、その特別演奏会が行われる。 指揮台に立つのは常任指揮者として2年目のシーズンを迎えている高関健。昨年は桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎による堂々とした力強い「第九」だったが、今回は違った印象の演奏になるはずだ。高関は常にスコアへ新しい視点から臨み、さまざまなオーケストラを指揮してベートーヴェンのサウンドをリフレッシュさせてきた。しかも、東京で高関の指揮による「第九」が聴けるという機会も貴重なだけに、さらに期待感は盛り上がるだろう。 ソリストの歌手陣も、9月定期《ファウストの劫罰》に出演した西村悟(テノール)と林美智子(メゾソプラノ)、人気ソ 小林研一郎は独自のポジションを持つ指揮者だと思う。音楽はいつも熱く、心に迫ってくる節回しがある。無骨に見えるスタイルは、華々しいスポットライトを浴びる超一流ブランドとはまた違った魅力を放つ。また国内だけではなくハンガリー、オランダやチェコのオーケストラとも太い絆を持ち、地味ながら国際的にも根強い人気を誇る。 おのれの道を黙々と歩み続ける「炎のコバケン」はどこまでも自然体。だからこそ気づきにくいのだが、東京がグローバルな音楽ビジネスの一角に組み込まれた現状にあって、70代後半でのこの活躍は凄いことだ。齢を重ねるほどに根を深く張り、カリスマ性をじわじわと増大させているのではないか。 そんなコバケン、11月には特別客演指揮者を務める読響の定期に登場し、べートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」とブラームス「交響曲第4番」を組み合わせた重厚なドイツ・プログラムを聴かせてくれる。ともにがっちりとした構造をプラノ歌手の市原愛、ベテランの域に達しているバリトン歌手の堀内康雄という充実のクァルテット。オーケストラの響きを熟知している東京シティ・フィル・コーアの合唱も、第4楽章においては雄弁な響きで聴衆の心に届くはずだ。 なお「第九」の前には、2015年の「日持つ曲で、読響を相手に真正面からぶつかっていく指揮ぶりや、ブラームスの哀愁をどう歌わせるかといったあたりに注目したい。 ベートーヴェンの独奏を務めるのは、1928年生まれのイェルク・デームスだ。盟友パウル・バドゥラ=スコダと並び戦前のウィーンの薫りを知る得難い長老本管打楽器コンクール」ユーフォニアム部門で第1位および東京シティ・フィル特別賞を獲得し、話題の「ぱんだウインドオーケストラ」等でも活躍している佐藤采香(あやか)がソリストとして登場。J.ホロヴィッツ作曲の協奏曲を演奏することにも注目を。で、古楽から名立たる歌手を支えてきた伴奏の妙技に至るまで、幅広い経験に裏打ちされた音楽を聴かせてくれる。そろそろ90歳に近づいてきたが、毎年のように元気に来日してくれるのも嬉しい。ウィーン風の格調高いベートーヴェンは、“コバケン節”とどのような対話を交わすのだろうか。市原 愛 ©武藤 章イェルク・デームス林 美智子 ©toru hiraiwa西村 悟 ©Yoshinobu Fukaya(aura)堀内康雄 ©Yoshinobu Fukaya(aura)高関 健 ©Masahide Sato小林研一郎 ©読響

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