eぶらあぼ 2016.10月号
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73上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 楽聖の傑作で、新時代への扉を叩く文:柴田克彦アフタヌーン・コンサート・シリーズ長谷川陽子 & 錦織 健 ~チェロと歌のデュエット~チェロと歌で拓く新たな世界文:飯尾洋一第1回 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉10/14(金)、10/15(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp10/22(土)13:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp これは超名曲集にして超新鮮なコンサートだ。9月から新日本フィルの音楽監督に就任した上岡敏之が打ち出した新機軸のひとつが、金曜と土曜の午後にすみだトリフォニーホールで行う『ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉』。就任記念を兼ねたその第1回が、「コリオラン」序曲、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第5番「運命」によるベートーヴェンの超名曲プログラムである。 上岡は、ザールランド州立歌劇場の音楽総監督、ヴッパータール市立歌劇場のインテンダント兼音楽総監督等を務めた、本場が認める名指揮者。ヴッパータール響や在京各楽団で聴かせた斬新な解釈でも名高い。だがそれは、慣習にとらわれずに楽譜や背景を見直すことから導き出された、“真の正攻法”ともいうべきアプローチ。ゆえに聴き慣れた名曲が新たな光を放ち、一瞬たりとも耳を離せなくなる。 そんな彼が、いわゆる“午後の名曲 えっ、チェロとテノールだけのコンサート? ピアノ伴奏もなし!? そんな一風変わった組合せによるコンサートが開催される。 チェロの長谷川陽子がテノールの錦織健とともに「やったことのないジャンルをふたりで開拓しよう」とチャレンジするのが、今回のチェロと歌のデュエット。曲はストラデルラ「教会のアリア」、ボンチーニ「お前を讃える栄光のために」、滝廉太郎「荒城の月」、オッフェンバック「ホフマンの舟歌」といった名曲の数々。「今回のために新たに編曲されたシンプルでスタイリッシュなサウンド」(錦織)で演奏されるという。もし、ピアノ伴奏が入っていればチェロとテノールがそれぞれ交互に主役を務めるようなプログラムになっていただろうが、なにしろチェロとテノールしかいないのだから、どんな「デュエット」になるのか、容易に想像がつかない。 もともとチェロは人間の声に近いといわれる楽器である。のびやかで暖公演”にも定期演奏会と等しい力を注ぐべく発案したのがこの『ルビー』。特に今回の演目が、新日本フィルとの方向性を知るにも、上岡の音楽作りを知るにも、もちろん名曲をハイレベルの演奏で楽しむにも、相応しいのは言うまでもない。中でも「運命」は、彼のこれまでのベートーヴェン解釈(「第九」など)からみて、耳を洗うような演奏かみのある音色は、喜怒哀楽さまざまな感情表現を可能とする。一方で、オーケストラでは低音を受け持ってアンサンブルを下から支える役割も果たす。主役にもなれれば、脇役にもなれるという万能性がこの楽器の強みだろうか。の予感大。またソロ・コンサートマスター、崔文洙がソロを弾くヴァイオリン協奏曲も、厚い信頼関係を反映した名奏が期待される。 さらには、公演前にホールに隣接する東武ホテルレバント東京の最上階で、東京スカイツリーを眺めながら楽しむ食事をセットにした「ランチプラン」もあるので、ぜひご注目あれ!となれば、長谷川陽子の八面六臂の活躍は必定。錦織健の甘美で華のある歌唱とともに、新たな音の世界を作り出してくれることだろう。 トークもふんだんにさしはさまれるという。リラックスして楽しみたい。崔 文洙錦織 健長谷川陽子上岡敏之 ©K.Miura

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