eぶらあぼ 2016.10月号
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60 ©Marco Borggreve第4回 小金井市民文化祭特別公演 こがねいガラ・コンサート 201610/30(日)15:00 小金井 宮地楽器ホール問 小金井 宮地楽器ホールチケットデスク042-380-8099 http://koganei-civic-center.jp菊池洋子(ピアノ)モーツァルトは“いい趣味”で弾くことが大切です取材・文:宮本 明Interview JR武蔵小金井駅前に2012年に開館した小金井 宮地楽器ホール(小金井市民交流センター)。毎年恒例の『こがねいガラ・コンサート』には、市内在住や地元ゆかりの奏者たちによる「こがねいガラ・オーケストラ」が集結する。今年、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の独奏者として招かれた菊池洋子も、小学生の頃、レッスンのために武蔵小金井に通っていたというゆかりの人。 「前橋から月に1、2度通っていましたね。電車の中で母が買ってくれるお弁当やアイスクリームが楽しみでした(笑)。2年前にリサイタルで久しぶりに小金井を訪れて、駅も周辺もまったく雰囲気が変わっていてびっくり。このホールは音響も心地よいし、ピアノが素晴らしいんです。小山実稚恵さんが選ばれたということですが、すごく華やかで、でも軽やかさもある、とても素敵なピアノです」 ザルツブルクのモーツァルト国際コンクールで日本人初の優勝という経歴を持つ彼女。自身もライフワークだと語るモーツァルトとの出会いはフォルテピアノだった。 「桐朋学園の高校を卒業して留学したイタリアのイモラ音楽院のピアノ科では、コンクール用のレパートリーを作るために、ベートーヴェンやリスト、ラフマニノフなど、ばりばりのヴィルトゥオーゾの曲ばかり弾いていました。しかし、新設されたフォルテピアノ科に入ってからの3年間は、モーツァルトをたくさん勉強しました。その成果を発表するためにと先生が薦めてくれたのがザルツブルクのコンクールだったのです」 音量や音色のコントロール、フレーズの作り方。現代の楽器に比べれば表現の機能的な制約のあるフォルテピアノで、それらをどう引き出すか。楽器から教わったことが、現代のピアノに向かう時にも生きているという。 「モーツァルトって、現代のピアノで弾くと普通にきれいな演奏になるんです。でもそれで形になったと思わずに、どう自由に弾くか。いつも心がけている課題です。そして常にエレガントに。アンドラーシュ・シフさんがおっしゃっていたのですが、モーツァルトはどんなに自由に弾いてもいいけれども、絶対に“Buon Gusto”=“いい趣味”で弾かなければダメだよと。やらなければ伝わらないけれども、やりすぎもダメ。そこが難しいですね。演奏会で、その音楽が今その場で生まれたと感じるようなモーツァルトが弾けたら最高です」 最近ヨーロッパの家をベルリンからウィーンに移した。ウィーンの空気を胸いっぱいに吸い込んで心機一転の彼女のモーツァルト!10/10(月・祝)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702http://www.triton-arts.netクァルテット・ウィークエンド ウェールズ弦楽四重奏団気鋭のクァルテットが挑む“1824年”の2大傑作文:渡辺謙太郎©Satoshi Oono 現在最も注目を浴びている若手クァルテットのひとつで、今年結成10周年を迎えるウェールズ弦楽四重奏団が、第一生命ホールの人気シリーズ『クァルテット・ウィークエンド』に登場する。 今回は、彼らの思い入れが深いシューベルトの後期作品に、ウィーンの作曲家を組み合わせた3回のシリーズを企画。その第1回目となる当公演では、シューベルトの第13番「ロザムンデ」と、ベートーヴェンの第12番を演奏する。この2曲は、ともに1824年に作曲され、初演も同じ演奏者が行った繋がりの深い作品。しかも、今回は初演された順番に演奏するので、当時のウィーンの聴き手が味わった感動を追体験できるかもしれない。 クァルテットの在り方を、「音が鳴った瞬間、ボールを蹴った瞬間に、ここにこう来るだろうなと、同時にお互いの考えが並行していないと成り立たないサッカーチームのようなもの」と語る彼ら。そのハイブリッドで洗練された解釈は、間もなく秋の晴海で明らかになる。
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