eぶらあぼ 2016.10月号
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58ミハイル・プレトニョフ(ピアノ) 孤高の名匠が継承するラフマニノフの芸術文:渡辺謙太郎シモーネ・ヤング(指揮) 東京交響楽団世界的女性音楽家ふたりが、哀愁の名曲で魅せる!文:柴田克彦10/17(月)19:00 浜離宮朝日ホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp第122回 名曲全集 11/3(木・祝)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール第646回 定期演奏会 11/5(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp ピアノはもちろん、指揮、作曲、編曲なども高度なレベルでこなす名匠として、多くの聴き手や音楽家から尊敬を集めているミハイル・プレトニョフ。リサイタルと協奏曲の双方で深い感銘を残した今年7月に続き、早くも今秋、ピアニストとしての来日が実現する。 プログラムは、オール・ラフマニノフ。この偉大な作曲家&ピアニストを敬愛するプレトニョフは、『ラフマニノフへのオマージュ』(1998年録音)と題したアルバムをドイツ・グラモフォンよりリリースしている。これは、スイスのルツェルンにあるラフマニノフの旧宅で、彼が実際に弾いていたスタインウェイを使用した録音。ラフマニノフ自身がリサイタルでよく弾いていたベートーヴェン、メンデルスゾーン、ショパン、ラフマニノフの自作曲などを並べた1枚だ。 以来、約20年あまり。今回のプログラムはそれと大きく異なり、すべてラフマニノフによる作品だ。プログラム 女性指揮者を特別視する時代ではないが、やはり“ウィーン・フィルを初めて指揮した女性”と言われれば「おっ」と思ってしまう。そのシモーネ・ヤングが、11月の東京交響楽団の定期とミューザ川崎の名曲全集に登場する。オーストラリア出身でドイツを本拠とする彼女は、2005年~15年までハンブルク州立歌劇場の総裁兼ハンブルク・フィルの音楽総監督を務め、ウィーン国立歌劇場やベルリン・フィル等に客演。ワーグナーの《ニーベルングの指環》を3つの著名歌劇場で完結させ、ハンブルク・フィルとのブルックナーの全集録音でも話題を呼ぶなど、あらゆる点で女性指揮者を代表する存在だ。 今回の演目は、ドヴォルザークのチェロ協奏曲とブラームスの交響曲第4番。前者では、バレンボイムが才能に惚れたアリサ・ワイラースタインがソロを弾く。アメリカ出身の彼女もまた、ベルリン・フィル、シカゴ響やマゼール、メータ等と共演している実力者。ドは、ピアノ・ソナタ第1番、前奏曲「鐘」、幻想的小品集(抜粋)、サロン小品集(同)、10の前奏曲(同)、絵画的練習曲集 op.39より第7番。豊かな色彩感と情熱的な表現が存分に味わえる。また、プレトニョフが近年愛用している河合楽器のグランドピアノ「Shigeru Kawai(KAWAI SK-EX)」が紡ぎ出す透明で精密な音色も楽しみだ。 前述のCDの解説文で、「私は、ホロヴィッツやミケランジェリへと続くラフマニノフの伝統を継承するピアニストヴォルザークは、本家ビエロフラーヴェク&チェコ・フィルとの録音で、細部まで血を通わせた驚嘆のソロを聴かせており、同曲の日本初演奏に大きな注目が集まる。 さてヤングの作る音楽やいかに? CDでは、ブルックナーで緻密かつスケールの大きな表現、本演目のブラーです」と語っていたプレトニョフ。抜群の音響を誇る浜離宮朝日ホールで行う今回の一夜限りの公演でも、新たな伝説を創り上げることだろう。ムスの4番で伝統に囚われない流動的・躍動的な演奏を展開している。そこでまずは東響の緻密さを生かした流麗な名演が期待されるが、独自の個性を主張する彼女だけに、足を運んでみないと始まらないのは確か。ともかくここは、世界的女性音楽家の興味深い演奏で、晩秋に相応しい名曲を堪能しよう!©Rainer Maillard/DGアリサ・ワイラースタイン ©Decca/Harald Homannシモーネ・ヤング ©Berthold Fabricius

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