eぶらあぼ 2016.10月号
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大野和士(指揮) 東京都交響楽団大野と名手たちが紡ぐ20世紀の“古典”文:山田治生新国立劇場 ワーグナー《ワルキューレ》(新制作)登場人物の関係と状況際立つ、装置と演出文:山崎太郎第818回 定期演奏会 Cシリーズ11/27(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第819回 定期演奏会 Aシリーズ11/28(月)19:00 東京文化会館問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp新国立劇場2016/17シーズン オープニング公演 《ワルキューレ》(新制作)飯守泰次郎(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団10/2(日)~10/18(火) 新国立劇場オペラパレス問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/opera 東京都交響楽団の十八番といえば、マーラー。昨年4月から音楽監督を務める大野和士も就任披露演奏会で第7番を取り上げ、好評を博した。ただ、音楽監督としての大野は、インバルやベルティーニのようにマーラーのすべての交響曲を一人で担うのではなく、様々な指揮者に都響でマーラーを振ってもらおうと考えている(今シーズンでは、ヤクブ・フルシャが第1番を、アラン・ギルバートが第5番を指揮)。それゆえに、都響で自らマーラーを振るのは、大野にとって、大きな勝負であるに違いない。そして今回、大規模な作品ではなく、マーラーの交響曲のなかで最も小振りな第4番を敢えて取り上げるところに大野の自信が感じられる。大野&都響の2シーズン目の成果を聴くことができるだろう。天羽明惠のピュアな歌声が天上の音楽に華を添える。 1901年に初演されたマーラーの交響曲第4番は20世紀の開始を告げ、そのあとにベルクやラヴェルなどの作曲 新国立劇場で制作が進行中の、故ゲッツ・フリードリヒ演出によるワーグナー《ニーベルングの指環》4部作。今シーズンのオープニングとなる第2作《ワルキューレ》で目を惹くのは、ゴットフリート・ピルツの舞台装置。昨年の《ラインの黄金》では具象物のほとんどない、メタリックな舞台が自由な演技空間を創りだしたが、今回は抽象性はそのままに、装置に各幕の状況を象徴するような、さまざまな変化が加えられる。夫婦の歪んだ関係や登場人物の不安定な情緒を表すかのように斜めに傾く、狭窄感に満ちた家の内部(第1幕)、ヴォータン(グリア・グリムスレイ)の槍の穂先のように先方を尖らせ、客席側に突き出された床や、登場人物に幼き日の回想を促す木馬の存在(第2幕)。そして第3幕では黒光りする床の上で、ギラつく白光に照らされて戦乙女たちの性的な乱舞が繰り広げられ、幕切れでは四方を大きく囲む炎がブリュンヒルデ(イレーネ・テオリン)の眠家が続いた。この演奏会の前半では、前衛的でありながらロマンティックな薫りを残したベルクの「アルテンベルク歌曲集」とラヴェルのなかではとりわけモダンな作品である「左手のためのピアノ協奏曲」という20世紀前半の傑作をりを見守る。 もちろん、こうした舞台装置が活きるかどうかは登場人物の演技にかかっている。舞台稽古が本格的に始動した9月5日の練習では、常に何かに怯えつづけるジークリンデ(ジョゼフィーネ・ウェーバー)、威圧感を漂わせたフンディング(アルベルト・ペーゼンドルファー)、虐げられた妻への共感が思わず態度に出るジークムント(ステファン・グールド)ら、三人の水面下に流れる感情の絡み合いをしっかり押さえて表現するよう、演出監修のアン楽しむ。ベルクでも天羽の歌唱が堪能できるほか、ラヴェルでの現代最高のピアニストの一人であるピエール=ロラン・エマールの登場も楽しみだ。フランス出身のエマールが最上のラヴェル演奏を聴かせてくれるだろう。ナ・ケロ(フィンランド国立歌劇場)からさまざまな指示が飛んでいた。この場面をはじめ、舞台上の動きがこれからの練習でどのように練り上げられてゆくのか。期待して本番を待つこととしよう。ピエール=ロラン・エマール©Marco Borggreve©Karan Stuke/Finnish National Opera天羽明惠 ©Akira Muto大野和士©Rikimaru Hotta53

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