eぶらあぼ 2016.10月号
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49ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮) バンベルク交響楽団レジェンドによる新たな名演の予感文:江藤光紀ウィーン国立歌劇場“本場”ならではのR.シュトラウスの官能的な響きに浸る文:石戸谷結子10/29(土)15:00 福岡シンフォニーホール(092-725-9112)、10/30(日)15:00 メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)(0985-28-3208)、11/1(火)18:45 愛知県芸術劇場 コンサートホール(中京テレビ事業052-957-3333)、11/2(水)、11/3(木・祝)各日19:00 サントリーホール(カジモト・イープラス0570-06-9960)、11/4(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(03-5353-9999)、11/5(土)16:00 京都コンサートホール(075-711-3231)※来日ツアーの詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.kajimotomusic.com《ナクソス島のアリアドネ》 10/25(火)19:00、10/28(金)15:00、10/30(日)15:00 東京文化会館《ワルキューレ》 11/6(日)、11/9(水)、11/12(土)各日15:00 東京文化会館《フィガロの結婚》 11/10(木)17:00、11/13(日)15:00、11/15(火)15:00 神奈川県民ホール問 NBSチケットセンター03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp チェコやオーストリアには、重厚で深いドイツ的な響きとも、力強く豪快なロシアの響きとも違う、朴訥で温かく、どこか渋い中欧の響きがあると思う。 プラハに住んでいたドイツ人音楽家たちが、敗戦によってドイツに帰り設立したのがバンベルク響。だからそのルーツの一端は中欧にある。バンベルクは爆撃の破壊もまぬかれ、古き良き香りを残した町だが、この忙しい時代にあってもローカリティを失わず伝統を大切にする姿勢は楽団にも通底し、ドイツ的であると同時に中欧の色合いを含んだサウンドが高い人気を呼んでいる。 今回の来日ツアーは世界中で名声が高まる一方の同団名誉指揮者ブロムシュ ウィーンのリング通りのど真ん中に、堂々と威容を誇るウィーン国立歌劇場。まさに、世界に冠たる“オペラの殿堂”だけに、公演のクオリティは保証ずみだ。その伝統の歌劇場が450名の大集団で引っ越し公演を行う。 3つの演目はいずれも、ウィーンで評判になった舞台ばかりだが、真っ先にお薦めしたいのがR.シュトラウスの《ナクソス島のアリアドネ》だ。大成功した《ばらの騎士》のあと、文豪ホフマンスタールとの共同作業で完成を見た、他に類を見ない複雑な構造を持つ面白味あふれるオペラだ。初演の後に現在の形に改定され、1916年にウィーン宮廷歌劇場で初演されたゆかりの作品だ。指揮は今年のバイロイト音楽祭で《指環》全曲を振ったマレク・ヤノフスキ。R.シュトラウスのオペラはオーケストラの響きが鍵となるが、ウィーンテットとの共演。ブロムシュテットは御年89歳で、スイングする指揮ぶりこそこじんまりしてきたものの、演奏はむしろ凝集力を高めている。バンベルク響とは2012年の来日でも高い評価を得ており、N響への客演も毎回、大変な評判だ。筆者は昨年ルツェルン音楽祭で聴いたマーラー・ユーゲント管とのブルックナーの交響曲第8番を鮮やかに思い出す。図太く筋の通った解釈は現代ブルックナー演奏の規範というべきものだった。 プログラムは、諏訪内晶子がヴァイオリン協奏曲を聴かせた後、交響曲第5番「運命」へ続くベートーヴェン・プログラム(10/29,11/2,11/5)、シューベルトの「未完成」からベートーヴェン「田園」に国立歌劇場管弦楽団(ウイーン・フィルの母体)は、流れるように優美で、香りたつように官能的な独特の響きが特徴だ。またシュトラウスの音楽には欠かせない華やかで艶やかな響きも、このオーケストラならでは。ウィーン国立歌劇場の公演では、歌手とオーケストラと演出が混然一体となって醸し出す格調高い舞台を観ることができる。ツェルビネッタ役のダニエラ・ファリーつなぐ“2大交響曲プログラム”(11/3)、そしてベートーヴェン「エグモント」序曲に続けて、休憩なしでブルックナーの交響曲第7番(11/4)が演奏される演目など、実に多彩。良演確実、今秋聴いておきたい筆頭コンサートの一つだ。をはじめ豪華歌手陣はもちろんだが、ベヒトルフのおしゃれで遊び心あふれる豪華な舞台も見どころだ。 他の演目では、《ワルキューレ》は歌手の顔ぶれが圧巻。現代最高のブリュンヒルデ歌いのシュテンメ、円熟の境地に入ったコニエチュニーの力強いヴォータンも聴きもの。《フィガロの結婚》は巨匠ムーティの指揮。人気のダルカンジェロをはじめ、旬の歌手が顔を揃える。左:マレク・ヤノフスキ 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会 撮影:青柳 聡右:《ナクソス島のアリアドネ》より Photo:Wiener Staatsoper/Michael Poehnヘルベルト・ブロムシュテット ©Martin U.K.Lengemann

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