eぶらあぼ 2016.10月号
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Presented by Kanagawa Arts Foundation フィンランド放送響の首席奏者、シベリウス弦楽四重奏団のチェロ奏者を経て、現在多彩な活動を展開しているフィンランドのセッポ・キマネン。彼の『白夜の国・フィンランドの至芸』と題したリサイタルが、一柳慧のプロデュースで開催される。キマネンは、1970年にクフモ室内楽音楽祭を、妻でヴァイオリン奏者の新井淑子とともに創始しており、一柳とは数十年来の友人である。 今回のプログラムは、ブラームスのソナタ第2番やフォーレの「エレジー」といったチェロの名曲に、フィンランド、日本の現代作品を組み合わせたユニークなものだ。 「フィンランドは白夜の夏はもちろんですが、太陽が殆ど出ない冬の寒く暗い時期でも、人々は家に閉じこもることをよしとせず、冬にも盛んに行われている音楽祭などの芸術鑑賞へ出掛けていって人々との交流を楽しむのがならわしとなっています。そこでも現代音楽をことさら特別視することなく、通常のリサイタルなどに組み込んだプログラムが多く見られます。聴く側も現代音楽だからと気負わずに、それぞれに楽しんでいるように感じますね。今回のキマネンのリサイタルは、ブラームスやフォーレ、シューマンなどのおなじみのチェロ作品に、コッコネンやリンドベルイなどを並べたとても面白いものになりました」 一柳自身の作品「プレリュード」も演奏される。 「日本を代表するチェロ奏者の堤剛さんの70歳のお祝いのために書いた作品です。キマネンは、日本人作品にも精通していて、間宮芳生さんの曲なども弾いていますが、今回彼自身が私の曲を選んでくれました」 共演のピアニストのマルコ・ヒルポはフィンランドの若手である。 「次代の音楽家の育成にも熱心なキマネンは、しばしば若手を抜擢しています。ベテランの彼と若い音楽家との共演で、どんな音楽が生まれるのかとても楽しみですね。キマネンの演奏スタイルは、とても情熱的でエネルギッシュな点が特徴ではないでしょうか。今回のリサイタルでも、熱のこもった演奏が聴けると期待しています」 リサイタル関連企画として、『日本・フィンランドの音楽事情と展望』と題したシンポジウムを開催。一柳、キマネン、そして日本とフィンランドの若手として川島素晴とペルットゥ・ポロネンが参加する。 「川島さんは私が注目している作曲家です。作曲家としての技量はもちろんすぐれていますが、社会的な事象にも関心が高く、アクション・ミュージックというコンセプトで巧みな表現を行っていますので、今回、議論は非常に白熱すると思いますね。ポロネンはキマネンの推薦ですが、1995年生まれのごく若い作曲家です。クラシックにとどまらずクロスオーバーな活動を展開していて、音楽関係のアプリの制作などでも高く評価されている俊英です。フィンランドと日本の創作の今を感じとれるシンポジウムにしたいと考えていますので、ぜひこちらも併せて聞いていただければと思います」フィンランドのチェリスト、キマネンの多彩な選曲と情熱的な演奏を楽しんでください取材・文:伊藤制子一柳 慧 ©Koh Okabe一柳 慧 プロデュース セッポ・キマネン チェロ・リサイタル─白夜の国・フィンランドの至芸─[曲目]シューマン:幻想小曲集コッコネン:ソナタフォーレ:エレジーリンドベルイ:ジュビリーズから3つの楽章一柳 慧:独奏チェロのための「プレリュード」シベリウス:4つの小品op.78より「ロマンス」「レリジオーソ」ブラームス:ソナタ第2番10/29(土)15:00 神奈川県民ホール 小ホール問 チケットかながわ0570-015-415http://www.kanagawa-arts.or.jp/tcシンポジウム 『日本・フィンランドの音楽事情と展望』10/28(金)19:00 神奈川県民ホール 小ホール問 神奈川県民ホール 事業課045-633-3686 http://www.kanagawa-kenminhall.comセッポ・キマネンToshi Ichiyanagi/作曲

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