eぶらあぼ 2016.10月号
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212CDSACDCDCDモーツァルト ピアノ名曲選/鮫島明子マーラー:交響曲第1番「巨人」/上岡敏之&新日本フィルピアノ愛奏曲集/中村芙悠子フランク:交響曲&ブラームス:交響曲第2番/フルトヴェングラーモーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番・第16番、デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲、ロンド K.485、アダージョ K.356(617a)・K.540鮫島明子(ピアノ)マーラー:交響曲第1番「巨人」上岡敏之(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団ドビュッシー:ベルガマスク組曲/ラヴェル:水の戯れ/シベリウス:樹木の組曲/ラフマニノフ:鐘/リスト:コンソレーション第3番/J.S.バッハ=ヘス:主よ、人の望みの喜びよ/ベートーヴェン:エリーゼのために/シューマン:トロイメライ 他中村芙悠子(ピアノ)フランク:交響曲ブラームス:交響曲第2番ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団ナミ・レコードWWCC-7816 ¥2500+税 収録:2016.3/16、サントリーホール,3/18、ザ・シンフォニーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00600 ¥3200+税ビクターエンタテインメントVICC-60940 ¥3000+税ユニバーサルミュージック/TOWER RECORDSPROC-1961 ¥1143+税ショパンをはじめとしたロマン派や古典派の作品を得意とする鮫島の演奏は、ピアノが“弾く”楽器であることを忘れてしまうほど、柔らかに響きわたるタッチが魅力的だ。モーツァルトの作品は奏者の技術、歌心、センスといった要素が全て露わになってしまう怖さを孕んでいるが、鮫島はその全てにおいて卓越した内容を聞かせてくれる。さらに、彼女のモーツァルトにおける特徴にはペダルの積極的な使用も挙げられる。旋律を“歌う”ことを極限まで重視した演奏は、とりわけソナタの緩徐楽章において効果が顕著。歌手が豊かな声で歌い上げる様が目に浮かんでくる。(長井進之介)この9月より新日本フィルの音楽監督に就任した上岡敏之。当CDはその“前哨戦”とでも言うべき今年3月のライヴ。何より仰天するのは第1楽章の展開部と第2楽章のトリオにおいて出現するグロテスクなまでのグリッサンドの強調だ。思えばこの楽曲、今でこそ“古典的名曲”に近いものに落ち着いているが、作曲された19世紀末にあっては人々に奇抜さの印象しか与えなかったのではないか。それを“追体験する”と言っていいのかは分からないが、本来的にマーラーの音楽がもつ“異物性”が剥き出しに露呈している。他にも特異な楽器バランス、テンポの自在な伸縮など、上岡節が炸裂。(藤原 聡)現在、ベルリンで研鑽を積む話題の若手ピアニストのデビュー盤。冒頭にドビュッシー「ベルガマスク組曲」を、中央にシベリウス「樹木の組曲」を配置。いわゆる名曲集とは一線を画した、立体的で聴きごたえのある内容になっている。中でも、密度の高い色彩感で編まれた「樹木の〜」は白眉と言えるだろう。中村は、柔らかいタッチと繊細なペダリングで、きめの細やかさと豊かな詩情を両立。また、弱音や休符の扱いも実に丁寧だ。最後に並ぶ「エリーゼのために」と「トロイメライ」では、一つひとつのフレーズを慈しむかのように誠実な演奏を聴かせてくれる。(渡辺謙太郎)フルトヴェングラー唯一のデッカへのスタジオ録音。1953年ウィーン・フィルとのフランクが素晴らしい。緩急の変化はライヴほどではないが、ツボに嵌っている。冒頭楽章の展開部での次第に高揚を作っていくやり方が実に巧い。第2楽章は繊細な表情づけが生きた美しい仕上がり。中間部以降の付点リズムの旋律もきれいで、神秘的な雰囲気もある。終楽章の循環主題を含めた構築もさすが。48年のロンドン・フィルとのブラームスは、全体の透明な響きが録音の優秀さを示している。終楽章で突然爆発する所がこの巨匠らしい。緩急をはっきり付けて、最後は息詰まる頂点を築く。(横原千史)
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