eぶらあぼ 2016.10月号
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100イマジン・シャイニング・スター・シリーズ Vol.16住谷美帆 サクソフォン・リサイタル10/28(金)19:00 Hakuju Hall問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp住すみや谷美帆(サクソフォン)サックス界にまた新星が現る!取材・文:渡辺謙太郎Interview 若手の台頭と活躍がめざましい日本サックス界に新星がまた一人。巨匠・須川展也の愛弟子で、現在、東京芸大3年に在学中の住谷美帆だ。12歳から吹奏楽部でサックスを始めた彼女は、繊細かつ大胆な演奏で、大学1年で日本管打楽器コンクールで第4位に入賞するなど、受賞歴も豊富。そんな彼女が、コンサートイマジンが若い才能を紹介するリサイタル・シリーズ『イマジン・シャイニング・スター・シリーズ』に登場する。しかも今回は、2012年の浜松国際ピアノコンクールの覇者で、多彩な音色と超絶技巧の持ち主として知られる名手イリヤ・ラシュコフスキーと初共演することでも注目を集めている。 「イリヤさんがロシアの方なので、グラズノフの協奏曲と、ムソルグスキー『展覧会の絵』という王道の2曲をメインに、ピアノと対等にわたり合えるプログラムを考えました」 住谷は今回、前半の4曲をすべてアルトサックスで演奏するという。 「須川先生の得意曲でもあるカッチーニの『アヴェ・マリア』は、私の最も好きな作品のひとつ。グラズノフの協奏曲は、ロシアらしい壮大でゆったりとした曲想が魅力ですね。ボノーの無伴奏作品『ワルツ形式によるカプリス』は、技巧的ですが聴き映えもする作品。ボルヌの『カルメン幻想曲』も難曲ですが、その技巧的で華々しい楽曲の数々は、サックスの性能や特徴がよく伝わると思います」 そして、後半の「展覧会~」。住谷はこの大作を、長生淳の編曲版(ソプラノ、アルト、テナー、バリトンのサックス4本を一人で扱う)で演奏する。 「長生さん編曲の『展覧会~』は、03年に須川先生がウィーンのムジークフェラインで成し遂げた衝撃的なパフォーマンスがあまりにも有名。でも、今年2月のNHK交響楽団のツアーでこの作品にエキストラ出演できたこともあり、あえてその高い壁に挑戦することにしました。私は普段、アルトとソプラノを吹くことが多く、バリトン・ソロは初体験。『ビドロ』『サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ』『バーバ・ヤーガの小屋』をこの楽器で吹くので、頑張って練習します」 現在、芸大の先輩や後輩の女性たちとサックス・クァルテットを組んだり、大学の副科でクラリネットを学んだりと、幅広い分野で研鑽中の住谷。今後は弦楽器や打楽器との共演にも意欲をみせており、さらなる飛躍が期待される。10/15(土)14:00 東京文化会館(小)問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp佐藤卓史 シューベルトツィクルス第6回「ピアノ・ソナタⅡ―20歳のシューベルト―」若きシューベルトの挑戦の軌跡を辿る文:飯田有抄©Takaaki Hirata シューベルトの全ピアノ作品を網羅する『佐藤卓史 シューベルトツィクルス』も、この秋で第6回目を迎える。今回のテーマは、「ピアノ・ソナタⅡ―20歳のシューベルト―」。ソナタ第5・7・8番、および「2つのスケルツォ D593」を取り上げる。 今回特に興味深いのは「双子のソナタ」とも称される第7番変ニ長調と第8番変ホ長調。両者を一晩のコンサートで聴けるのは極めて貴重。“原曲”としての第7番、その“アップグレード版”と見なされる第8番を、佐藤は丹念に読み解く。両者の違いを明確に整理し、第7番の未完部分を資料に基づいて補完し、第8番で拡大された箇所を把握する。自筆譜調査のためにウィーン楽友協会まで足を運ぶ熱意と、シューベルトの創作によせる関心。本公演は、そんな佐藤の飽くなき探求の成果となろう。 音楽そのものが放つ瑞々しさ、ウィットや思想を存分に伝えてくれる佐藤の演奏。研究に裏付けられた音楽の輝きを、ぜひ堪能したい。

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