eぶらあぼ 2016.9月号
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62大谷康子 輪島漆塗りヴァイオリン「天の川」を弾くいまベールを脱ぐ“洋魂和才”の響き文:笹田和人シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団バロックからロマン派への旅文:オヤマダアツシ9/12(月)19:00 ヤマハホール 問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-30409/25(日)14:00 北國新聞赤羽ホール問 北國新聞読者サービスセンター076-260-8000 http://yasukoohtani.com第192回 土曜マチネーシリーズ 10/8(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第192回 日曜マチネーシリーズ 10/9(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第91回 みなとみらいホリデー名曲シリーズ10/10(月・祝)14:00 横浜みなとみらいホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 世にも美しい色彩を纏ったこの楽器から、一体どのように魅惑的な音色が紡ぎ出されるのか。本来は、オイルを主成分とするニスが塗られている、西洋の弦楽器。それは、楽器の音色にも大きな影響を及ぼす。そして、加賀・能登の名職人、八井汎親(やついひろちか)は「輪島の漆を塗った楽器を作れないか」と着想し、輪島漆塗りのヴァイオリン「天の川」を遂に完成。名ヴァイオリニストの大谷康子の手により、“洋魂和才”の響きの世界がベールを脱ぐ。 漆を何層にも薄く塗り重ねてゆく中から、独特の艶と深みを生み出してゆく輪島塗りの技法。しかも、八井は「ただ見た目に美しい工芸品としてだけでなく、美しい音を奏でられる楽器に」との願いから、長く東京交響楽団コンサートマスターとして活躍した後、ソリストとして精力的に演奏活動を行い、「歌うヴァイオリン」と、聴衆の絶大な支持を受ける大谷から、様々な助言を得たという。 シルヴァン・カンブルランが読売日本交響楽団の常任指揮者に就任したのは2010年4月。2016/17シーズンは早くも7年目であり、この6月にはストラヴィンスキーやブルックナーを軸としたプログラムを聴かせたばかり。さらに10月は6回のコンサートで4つのプログラムを指揮するという活躍ぶりだ。言うまでもなくオーケストラの対応力や表現の幅も広がり、オールマイティカードを何枚もキープして使えるような状態だろう。 その10月に行われるコンサートの中、8日~10日の3日間(東京芸術劇場、横浜みなとみらいホール)は「バロックからロマン派への旅」といえる3曲が並ぶ。オペラ《カストールとポリュックス》のコンサート用組曲は、ジャン=フィリップ・ラモーによる典雅なフランス・バロック音楽(舞踊組曲)。また、何度も来日してベートーヴェンやシューベルトなど、ドイツ系の音楽を端正な演奏で聴かせているマルティン・シュタットフェ 今回のステージは、ピアノの藤井一興が共演。前半では、外山雄三「日本民謡による組曲」をはじめ、武満徹の「映画音楽集」、この楽器が生まれた加賀にちなんでの古関裕而「百万石音頭」や渡辺俊幸「利家とまつ」、さらに服部隆之「真田丸」など最新の大河ドラマルトが、コンサートで演奏される機会が少ないモーツァルトのピアノ協奏曲第15番を弾くのも注目だ。そしてメインはシューベルトの「グレイト」交響曲。ドイツ・ロマン派交響曲を美麗な響きで塗り替えてきたカンブルランと読響のテーマまで、“和才”の邦人作曲家の多彩な作品を。そして、後半ではフランクのヴァイオリン・ソナタに、ドビュッシー「月の光」など藤井のソロを交えつつ、和と洋が再び交錯する。誰もまだ知らない、“洋魂和才”の響き。ぜひご自身の耳で、体験していただきたい。だけに、シューベルトのピュアな旋律をシルクのような輝きで再現するのでは…と予想するのも楽しいが、このコンビなら余裕をもって新しいシューベルトの響きを提示してくれるだろう。楽しみは当日にとっておきたい。輪島漆塗りヴァイオリン「天の川」マルティン・シュタットフェルト ©Uwe Arens大谷康子シルヴァン・カンブルラン ©読売日本交響楽団

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