eぶらあぼ 2016.9月号
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54『マハゴニー市の興亡』ジャズ・テイストの“音楽劇”として蘇るブレヒト&ヴァイルの問題作文:藤本真由上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団華麗なサウンドで新時代の幕開けを告げる文:飯尾洋一9/6(火)~9/22(木・祝) KAAT神奈川芸術劇場 ホール問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kaat.jp第561回 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉9/9(金)19:00 サントリーホール横浜みなとみらいホール 特別演奏会9/11(日)14:00 横浜みなとみらいホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトと作曲家クルト・ヴァイルのコンビといえば、1928年に初演された音楽劇《三文オペラ》で名高い。日本でもたびたび上演されてきた《三文オペラ》に比べ、1930年に初演されたオペラ《マハゴニー市の興亡》は上演の機会にほとんど恵まれてこなかったが、このたび、芸術監督・白井晃の演出によって、KAAT神奈川芸術劇場に登場することとなった。 白井はストレートプレイのみならず、オペラ、ミュージカル、音楽劇なども多く演出してきており、音楽を活かす舞台作りには定評あるところ。オペラの分野では《オテロ》《愛の白夜》《魔笛》《こうもり》《フィガロの結婚》などに取り組んできている。2007年には『三文オペラ』を手がけ、時代を映す演出を施して成功をおさめた。今回の舞台では音楽監督にジャズ・ピアニストのスガダイローを起用、ジャズのムードのもと、 いよいよ新日本フィルの新音楽監督に就任する上岡敏之。就任記念公演となる9月のサントリーホール・シリーズ『ジェイド』は、リヒャルト・シュトラウスの絢爛たるふたつの交響詩で幕を開ける。シュトラウスは上岡がたびたび取りあげてきた得意のレパートリー。「ツァラトゥストラはかく語りき」と「英雄の生涯」、いずれも大編成のオーケストラによる壮麗なサウンドが聴きものである。オーケストラの機能性が最大限に発揮され、管弦楽法の大家であったシュトラウスならではの響きの芸術を堪能できることだろう。 選曲も興味深い。「ツァラトゥストラはかく語りき」といえば、「日の出」と呼ばれる冒頭部分がなんといっても有名だ。まさに新たな時代の幕開けにふさわしい選曲といってよいだろう。一方、「英雄の生涯」は作曲者の自伝的交響詩。作曲時にシュトラウスがまだ30代前半だったことを考えるとずいぶん気作品がいかなる時代精神を帯びるのか、気になるところ。舞台上には「マハゴニー市民席」なる客席を設けるということで、観客をも巻き込んだ演出プランが楽しみだ。 高い演技力と歌唱力で、白井作品での早い自伝だが、交響詩の作曲家としてはこの作品で頂点が築かれている。輝かしいヒーローの物語が、これからの新日本フィルで紡がれていくのだという予感を抱かせる。 「英雄の生涯」の聴きどころのひとつは、コンサートマスターによる長大で技巧的なヴァイオリン・ソロ。「英雄の伴侶」を意味するこの大ソロを崔文洙(チェ・ムンス)が奏でる。マエストロとの厚い信頼関係が伝わってくるのではないか。も活躍を見せる山本耕史をはじめ、マルシア、中尾ミエ、上條恒彦、古谷一行と、個性豊かなキャストが集合。ブレヒト×ヴァイルのまなざしが、白井演出を通して現代を鋭く貫く舞台となることを期待したい。左より:上條恒彦/中尾ミエ/山本耕史/マルシア/古谷一行上岡敏之 ©大窪道治
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