eぶらあぼ 2016.9月号
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50チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団信頼し合う名コンビならではのベートーヴェンを愉しむ文:オヤマダアツシ広上淳一(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ユニークな企画でベルリオーズの魅力を再発見文:江藤光紀第104回 東京オペラシティ定期シリーズ9/21(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第884回 サントリー定期シリーズ9/23(金)19:00 サントリーホール第885回 オーチャード定期演奏会9/25(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp第302回 定期演奏会 12/10(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp クラシック音楽におけるブランド力というものがあるなら、チョン・ミョンフンと東京フィルのベートーヴェンは、すでにかなり高いレベルで信用を築いているのではないだろうか。指揮者自身が「現在の私たちの総決算」とコメントした交響曲全集のCD(2006年発売)から10年。ますます強固になった絆により、内面的に充実した音楽を聞かせるこのコンビだからこそ、“いま聴けるベートーヴェン”があるような気がしてならない。今年の7月定期では、チャイコフスキーの交響曲第4番やオペラ《蝶々夫人》といった、表面的な華やかさだけでは決して描ききれない作品を掘り下げて聴衆を熱狂させたが、9月定期はその感動を経てのベートーヴェンである。 3回の定期演奏会で軸になるのは交響曲第6番「田園」。作曲者自身が「感情の表出」であるとコメントしたこの交響曲は、自然のさまざまな形を通じて宇宙や愛を語り、最後は創造主である 東京シティ・フィルのオータム・シーズンは、現在40~50代の働き盛り世代の指揮者たちが、ベルリオーズの交響的3作品の連続上演で競う。9月は常任指揮者・高関健の指揮で大作《ファウストの劫罰》を取り上げ、シーズン・オープニングと定期300回を祝う。さらに11月に下野竜也、12月には広上淳一が登場。抜群の描写力、豪華絢爛なオーケストレーションなどベルリオーズの魅力を再発見させてくれる旅を味わえそうだ。 「男の刹那な最期 ―ベルリオーズの失恋劇場 その②」というタイトルが付いた12月定期では、オーケストラを自分のペースへ誘い込むのがうまい広上が、ヴィオラ独奏つきの交響曲「イタリアのハロルド」を振る。これは詩人バイロンの「チャイルド・ハロルドの巡礼」に想を得たもので、オーケストラの演出する“大自然”の中を、ハロルド役のソロ・ヴィオラがさすらい、山賊に殺されるまでを描く。ベルリオーズはこ神へ感謝を捧げるという作品だ。各楽章の描き方こそが曲の味わい深さへとつながり、深い感動を終着点とした心の散策だといえるだろう。加えて、9月21日および23日は、ショパン国際ピアノ・コンクール優勝で脚光を浴びの曲をパガニーニの委嘱で書き始めたが、独奏の技巧性よりも作品のテーマ性とそれを支える骨太の構成力が勝っていったために、最終的にはヴィオラ付きの交響曲となった。「幻想交響曲」を彷彿とさせる優れた情景描写に加え、夜の祈りや牧歌など豊かな楽想が詰まった隠れ名曲だ。ソロは日本を代表するヴィオリスト、川本嘉子。たチョ・ソンジンを迎えての「皇帝」。9月25日は、「田園」の5年後に初演された交響曲第7番を演奏。すべてがベートーヴェンの黄金像に圧倒されるようなプログラムであり、感動に震えながら帰途につける3日間となるだろう。 演奏会の冒頭には、同じくベルリオーズの人気曲「海賊」序曲が演奏されるが、こちらもバイロンの同名の物語詩にインスピレーションを得ている。加えて20世紀フランスを代表する作曲家プーランクのバレエ音楽「牝鹿」。若い男女の恋愛模様がテンポよく洒脱なサウンドで紡がれる。選曲の妙も楽しみたい。チョ・ソンジン ©Ramistudioチョン・ミョンフン ©上野隆文川本嘉子広上淳一 ©Greg Sailor

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