eぶらあぼ 2016.9月号
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172SACDCDCDCDリスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 他/辻井伸行ラインの歌/新納洋介トリロジー/清水真弓&ブラニミール・スローカー&フランソワ・キリアンプロコフィエフ:交響曲第5番&スキタイ組曲/ソヒエフ&ベルリン・ドイツ響リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調ラヴェル:夜のガスパール辻井伸行(ピアノ)J.S.バッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ/ビゼー:ラインの歌/ショパン:4つのマズルカ op.68/シューベルト:さすらい人幻想曲新納洋介(ピアノ)ミシェル:トリロジー/デュティユー:コラール、カデンツァとフガート/シューレック:トロンボーンとピアノのためのソナタ「ガブリエルの声」/ウェーバー:ロマンス/モーティマー:カルメン・ファンタジー 他清水真弓、ブラニミール・スローカー(以上トロンボーン)フランソワ・キリアン(ピアノ)プロコフィエフ:交響曲第5番、スキタイ組曲トゥガン・ソヒエフ(指揮)ベルリン・ドイツ交響楽団エイベックス・クラシックスAVCL-25903 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9160 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCC-00125 ¥3200+税収録:2013.10/5,10/6,2014.4/19,4/21、ベルリン(ライヴ)ソニーミュージックSICC-30268 ¥2600+税辻井伸行が、昨年のツアーで弾き込んだリストのロ短調ソナタを収録。爆発的な音と繊細な歌のコントラストは強いが、感情的に取り乱すところはなく、それが作品の高潔な側面や作曲家の慈愛に満ちた精神を際立たせるよう。終盤のあたたかい響きも印象的。残響が柔らかなヴェールのように演奏を包んでいる。またラヴェルの「夜のガスパール」は、水の中をゆったりと泳ぐようなのびやかな表現による「オンディーヌ」に始まり、「絞首台」、「スカルボ」と闇の中で繰り広げられるファンタジーを丹念に描く。超絶技巧の背後に深遠なドラマを持つ2作品が、透明感ある音で収められている。(高坂はる香)40歳――ピアニストとしても指導者としても、バランス良く充実した日々に支えられている。そんな安定感と音楽への愛情を感じさせるアルバムだ。附属高校から東京芸大で学び、パリ地方国立音楽院およびウィーンの名教師のもとで研鑽を積んだ新納洋介。ピアノ、そして音楽への真摯で深い眼差しが、抑制を効かせつつも熱意を滲ませるバッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」から伝わる。ビゼーの“無言歌”と言える「ラインの歌」は、朴訥と物語るような美しさ。シューベルトの「さすらい人幻想曲」は、楽章間の繋がりとそれぞれのキャラクターとを存分に味わうことができる。 (飯田有抄)南西ドイツ放送響の首席トロンボーン奏者・清水の2枚目のCD。今回は恩師である重鎮スローカーとの共演が実現した。内訳は、師弟デュオが6曲、ソロが2曲ずつ、全曲でピアノを弾くキリアンのソロも1曲。ミシェルの委嘱作の題名「トリロジー」つまり「三部作」は、“3人で作り上げた”ことを意味してもいる。質感の揃った演奏が愉しい師弟デュオをはじめ、デュティユーでの清水の柔らかな表情、シューレックでのスローカーの衒いなき味わいなど、聴きどころの多い内容は、一夜の多彩なコンサートの趣。清水の解説も理解を深め、万人が楽しめる1枚となっている。 (柴田克彦)ロシアの俊英トゥガン・ソヒエフは、プロコフィエフを得意としており、かつてのDVD《3つのオレンジへの恋》も昨年のCD『イワン雷帝』も素晴らしかった。交響曲第5番もややくすんだ渋い音色ながら、透明に鍛え上げられた響きで、くっきりと造形される。緩徐楽章の美しい歌とグロテスクな中間部との対比、スケルツォと終楽章の颯爽としたスピード感など、とても魅力的だ。「スキタイ組曲」冒頭の原始主義的エネルギーの爆発は青年プロコフィエフの心の叫びであり、ソヒエフの的確なコントロールが実に多彩な響きを生み出し、聴く者を楽しませてくれる。(横原千史)

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