eぶらあぼ 2016.8月号
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57CD『J.S.バッハ:ブランデンブルグ協奏曲(ピアノ編曲版)』マイスター・ミュージックMM-3083-84(2枚組)¥3900+税7/25(月)発売Photo:Junichi Ohnoカール=アンドレアス・コリー(ピアノ)「ブランデンブルグ協奏曲」をピアノ1台で表現!取材・文:渡辺謙太郎Interview J.S.バッハ演奏のスペシャリストとして、多くの名盤を発表してきたカール=アンドレアス・コリー。7月発売の最新盤は、その中でも特筆に値する1枚になることだろう。なんと、今回彼は「ブランデンブルグ協奏曲」をピアノ1台で全曲録音しているのだ。 「ここ数年、J.S.バッハへの敬愛から、誰もやっていないことに挑戦したいと思うようになり、大好きな『ブランデンブルグ~』に狙いを定めたんです。編成や構成上、第1~4番は目処が立ったのですが、第5&6番は一筋縄ではいかず、構想から録音に至るまで、約1年もの月日を要しました」 中でも、コリーが苦労したのが第6番だったという。 「ヴィオラのカノンが多用された第6番は、同じような音色が交差しながら進んでいきます。最初はそれを4手で多重録音しようと思ったのですが、その時偶然にも、とあるベルギーの楽譜収集家からすすめられた編曲と出合ったのです。この版は実に優れた解決策を示してましたので、そのまま採用しました」 第1~5番は、チェコ出身のピアニストで作曲家、アウグスト・ストラダルの編曲をベースに、コリー自ら再編曲した楽譜で演奏している。 「ストラダルは、ブルックナーとリストの弟子にあたる人。彼は他にも、J.S.バッハの管弦楽組曲やオルガン曲、ヘンデルの協奏曲、リストの管弦楽曲、ブルックナーの交響曲など、膨大な数のピアノ編曲を残しています。ただ、『ブランデンブルグ~』に関しては、原曲の再現に重きが置かれ過ぎていて、ストラダル自身はかなり遅めに弾いていたようです。でも、私はカール・リヒターのような中庸のテンポで弾きたかったので、ストラダル版をベースにしつつ、必要な声部の取捨選択を適宜行いながら録音しました」 各曲の聴きどころを尋ねると、 「第1番で際立たせたのは、第1楽章のホルン・ソロや、第2楽章の美しいアダージョ。第2番は声部が少ないですが、原曲では複数の楽器に均等にソロが与えられているので、その対比に苦労しましたね。第3番は弦楽器中心の豊麗で変則的な編成を、ピアノ1台でいかにコンパクトにまとめるかが課題。第4番はリコーダーの牧歌的な響きを、第5番は第1楽章のチェンバロの長大なカデンツァを、それぞれピアノでどう描いたかにご注目ください」 技巧的にも、音楽的にも、実に緻密で洗練された至高のJ.S.バッハが記録された当盤。いつの日か、日本でのライヴという形でも味わえることを祈りたい。7/27(水)19:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション 03-3572-3171https://www.yamahaginza.com/hallマチュー・デュフォー(フルート) 欧米の頂点に立った名手を間近で堪能文:柴田克彦 それはまさに“世界制覇”の感がある。シカゴ響の首席フルート奏者マチュー・デュフォーが、2015年9月(決定は14年5月)ベルリン・フィルの首席奏者に就任した。世界最高の機能を有する2大オーケストラの首席を歴任するなど前代未聞。彼の規格外ともいえる技量を物語っている。1972年パリに生まれたデュフォーは、91年トゥールーズ・キャピトル国立管の首席奏者、93年パリ・オペラ座管のソリストを経て、99年シカゴ響の首席奏者に就任。フランスの教育、オペラの経験、アメリカの環境を経たことで、幅広い音楽性を獲得し、艶のある音色、豊かな表現力、気品を併せ持つ演奏で聴衆を魅了している。 彼はこの7月、昨年に続いてヤマハホールでリサイタルを行う。前回はバロックと20世紀作品が中心だったが、今回は、シューベルト、マルティヌー、ルーセル、フランクとロマン派&近代の大家が並ぶプログラム。しかも「しぼめる花変奏曲」やフランクのソナタなど勝負曲揃いだ。333席のプレミアムな空間で味わえるのも贅沢の極み。それゆえチケットはお早めに!
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