eぶらあぼ 2016.8月号
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45©Takashi Araiロームシアター京都セレクション 寒川晶子 ピアノコンサート~未知ににじむド音の色音(いろおと)~9/24(土)18:00 ロームシアター京都 サウスホール問 ロームシアター京都 チケットカウンター075-746-3201 http://rohmtheatrekyoto.jp寒川晶子(ピアノ)ピアノの新たな可能性を追求し、未知の音色を紡ぎ出す取材・文:小沼純一Interview 『ド音ピアノ』、ド音のみのピアノ―想像してみよう。ド音だけで音楽になるのだろうか。どんなひびきなのだろう。 「子どもの頃、書道で墨汁を使うなと言われて、硯をすった薄い水まじりの色で書いていたんです、そうしてでてくる世界が好きでした。墨一色だけどグラデーションがある。そんな音の世界をつくりたい…」 もともとの発想は2010年。寒川晶子が考案し調律の鈴木良に相談し実現した。『ド音ピアノ』は「鍵盤の音はみんなド。1オクターヴ内でドとド♯の間を12分割し、通常のピアノ音階を極端になだらかに調律」している。 「ピアノの音はかならず減衰します。減衰しないピアノの音を聴いてみたい。そんなことも、この発想とつながっているのかもしれません。この楽器でも減衰します。するけれど、となりの鍵盤を押しても(周波数が僅かに異なっている)ドなので、トリルを弾いているとつながっているように感じる。ピアノ音が滲み出て、お経や、虫が飛ぶかのようにうねります」 『ド音ピアノ』の認知はまだまだ。寒川はネット公開もまだしていないし、アルバムをリリースしているわけでもない。 「録音ではよくわからない。鳴っている空間でこそ味わえる音です」 いわゆる西洋的な前衛・実験といった音楽作りとは異なる。 「能管のような音が好きです。西洋のクラシック音楽では、音がたちあがったらすぐにカウントが始まっている感じがありますよね。でも、能管だと、一気に崩れる。カウントからはなれてしまう。そういうのをつくりたい」 ロームシアター京都でのコンサートでは、寒川による『ド音ピアノ』のソロ、檜垣智也のアクースモニウムとの共演、さらに、この二者と伊藤悟による「機織り」の音が加わる三部構成。特に中国雲南省のタイ族の機織りは、世界でも珍しい“音ありき”の機織りで、三者三様の発音形態もさることながら、視覚的なおもしろさも期待させられる。 2014年、革(革職人)とエルメスの絆をテーマとした展覧会、エルメス『レザー・フォーエバー』の前夜祭で『ド音ピアノ』を弾いたという。京都出身だから、機織りがそばで聞こえる環境に育ったことも大きいと言うが、もしかしたら、そんなところにも、織物と『ド音ピアノ』との縁があるのかもしれない。 今回は京都ではじめての公演。京都で育ったピアニストは、あたまの片隅で、西陣織の織機の音も聴いているのだろう、きっと。10/1(土)14:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp紀尾井シンフォニエッタ東京メンバーによるアンサンブル小菅 優(ピアノ)とともに贈る楽しい室内楽オーケストラの名曲を小編成で愉しむ文:笹田和人小菅 優 ©Marco Borggreve ソリストや室内楽奏者として、あるいは主要オーケストラの首席奏者として、第一線で活躍中の名手たちが集結し、1995年に東京・紀尾井ホールのレジデント・オーケストラとして組織された「紀尾井シンフォニエッタ東京」。そのメンバーによる、全3回にわたるアンサンブル・シリーズがスタートする。第1回には、日本を代表する若手ピアニストとして、目覚ましい活躍を続ける小菅優が登場。サン=サーンスの「動物の謝肉祭」をはじめ、魅惑の旋律の数々を紡ぐ。まずは、千葉純子と山﨑貴子(ヴァイオリン)、鈴木学(ヴィオラ)、河野文昭(チェロ)、池松宏(コントラバス)を伴い、ショパンのピアノ協奏曲第1番を、弦楽五重奏による伴奏への編曲版で。そして、野口みお(フルート)と池田昭子(オーボエ)、松本健司(クラリネット)と共演し、サン=サーンス「デンマークとロシアの歌による奇想曲」を披露。最後は、もう1人のピアニストに居福健太郎、そして打楽器も加わっての「動物の謝肉祭」で賑やかに締め括る。

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