eぶらあぼ 2016.8月号
46/171

43ハーゲン・クァルテット室内楽の極地を示す“神聖な儀式”文:オヤマダアツシロレンツォ・ヴィオッティ(指揮) 東京交響楽団注目の新星、再び登場文:飯尾洋一9/14(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 https://www.japanarts.co.jp第93回 東京オペラシティシリーズ9/3(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール第120回 名曲全集9/4(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp バロック音楽から現代の作品に至るまで、幅広い時代・様式の作品をレパートリーにもち、それを繊細かつ真摯な態度で音に作り上げていくハーゲン・クァルテット。メンバーは全員が「パガニーニ」と称されたストラディヴァリウスを演奏し、その透徹した響きによってベートーヴェンをはじめとする名作群へ新しい光を当ててきた。その上で、“神聖な儀式”とも言えるような一夜が、この9月14日に用意されているのだ。 J.S.バッハ、ショスタコーヴィチ、そしてベートーヴェンの作品が並ぶプログラムは、弦楽四重奏団のコンサートであるなら珍しくはない。しかし、そこに「フーガ」というひと筋の光が差し込むことで、プログラムはさらに輝きを増すことだろう。J.S.バッハの「フーガの技法」より選ばれた4つの「コントラプンクトゥス」は、純粋に美しいフォルムをもったフーガの具現化。1960年に作曲・初演されたショスタコーヴィチの弦楽四重奏 この9月、東京交響楽団の指揮台に立つのはロレンツォ・ヴィオッティ。2014年に急遽ウルバンスキの代役として東曲第8番は、冒頭から作曲者の音楽的刻印である「D-S-C-H」というモティーフが登場し、旧作をコラージュしながら「ファシズムと戦争の犠牲者」を追悼するという作品(最終楽章=第5楽章もフーガ!)。そして後半は長大なベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番に「大フーガ」を加えるという、室内楽の極地を見せてくれるようなプログラム。すべての感覚をオープンにし、あらゆる響きを聴きとりたい時間と空間が実現する。響に招かれ、好評を博した注目の新鋭である。代役を務めて脚光を浴びるというのは、優秀な若手指揮者が辿るお決まりのコースといってもいいが、ヴィオッティはすでにウェルザー=メストの代役としてロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団にもデビューを果たしている。15年のザルツブルク音楽祭ネスレ・ヤング・コンダクターズ・アワードを受賞したほか、13年のカダケス国際コンクールやライプツィヒMDRコンクールでも優勝し、将来を嘱望されている。 ロレンツォ・ヴィオッティの父親は名指揮者マルチェッロ・ヴィオッティ。フェニーチェ歌劇場音楽監督などオペラ指揮者として活躍したが、05年に50歳で若くして世を去った。そんなオペラ指揮者の父親と、フランス人の母親の間に生まれ、ウィーンで指揮を学んだロレンツォは、その出自にふさわしい多彩なプログラムを組んだ。ベートーヴェンの交響曲第4番とR.シュトラウスの歌劇《ばらの騎士》組曲、そしてラヴェルの「ラ・ヴァルス」。ウィーンの交響曲からワルツを経由してフランスにたどり着く。指揮者のキャラクターがはっきりと伝わってきそうな選曲だ。 東響に登場した若い指揮者が、その後またたく間に活躍の場を広げ多忙を極めるというのはなんどか目にしたパターンだが、ヴィオッティもそんな新星のひとりになりそうな予感。©Harald Homannロレンツォ・ヴィオッティ ©Stephan Doleschal

元のページ 

page 46

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です