eぶらあぼ 2016.8月号
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36山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団新境地を示す新シーズンの幕開け文:柴田克彦下野竜也(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団“ある芸術家”の心の深奥とドラマを描く文:オヤマダアツシ第683回 東京定期演奏会9/2(金)19:00、9/3(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp第301回 定期演奏会11/6(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp 創立60周年を迎えた日本フィルの新シーズン最初の東京定期演奏会に、山田和樹が登場する。同楽団の指揮者陣は依然充実。新首席指揮者インキネン、主にロシアもので数多くの名演を残しているラザレフとの関係を継続し、山田和樹も正指揮者の契約を2022年まで延長した。今秋モンテカルロ・フィルの芸術監督兼音楽監督に就任し、先のバーミンガム市響の日本公演でも生気溢れる名演を展開した“世界のヤマカズ”との関係維持は、ファンにとっても朗報。なぜなら彼が、「今やりたいことが一番できるオーケストラ」と語る日本フィルで、他にないプログラムを実現させているからだ。 9月の定期も然り。まずは生誕100周年・没後20周年を記念した柴田南雄の「コンソート・オブ・オーケストラ」で、多彩な楽器の絡み合いが独特の音響世界を形成する作品の、生でこその妙味が示される。2曲目はR.シュトラウスの「4 コンサートの告知チラシに『ベルリオーズの失恋劇場 その① 悪夢に苦しむ男』という愉快な(でも本質を突いた)キャッチフレーズが掲載されている、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の11月定期演奏会。その“失恋劇場”が繰り広げられるのは、おなじみの「幻想交響曲」だ。言うまでもなく、東京だけでも年に何度も演奏されているであろう人気曲であり、それだけに「どこかが違う」という演奏を求めてしまうのは道理だろう。 指揮台に立つのは、これまでにもさまざまな曲に新たな光を当て、ときには未知の影を浮かび上がらせてきた下野竜也。今回スポットライトを当てるのは作曲者のベルリオーズと女優スミッソンとの関係か、曲の主役とも言える“ある芸術家”の心の闇か、それともスコアという音楽の設計図なのか。失恋劇場の開演が待たれる。 その前に演奏されるモーツァルトのつの最後の歌」。今最も輝くメゾソプラノ歌手の一人、清水華澄(かすみ)を迎えて人生の黄昏が美しく描かれる。後半は、同楽団が日本初演を行ったエルガーの大作・交響曲第1番。Bunkamuraでのマーラー・ツィクルスで、細部の息吹と構築感を併せ持つ演奏を聴かせているコンビの大曲での手腕が存分に発揮される。ピアノ協奏曲第25番も、ハ長調という明朗な響きに乗せて展開される“劇”になるかもしれない。というのも、ソリストとして登場する菊池洋子はイタリアでフォルテピアノの演奏を学び、「モーツァルトの作品は鍵盤上のオペラ」とコメントしたこともあるからだ。モー 異次元的な柴田の音楽、ロマン派の「最後の歌」でもあるシュトラウスの清澄な音楽、逆に英国でロマン派的な交響曲の幕開けを告げたエルガーの雄大な音楽…と何れも20世紀の作品だが在り方は全く異なる。温故知新を重視しながら前世紀音楽の多面性を浮き彫りにする当コンビならではの内容は、大いに食指をそそられる。ツァルトによるピアノ協奏曲の中でもエネルギーに満ちている作品であり、第1楽章はまさにオペラの序曲かと思うような幕開け。ゆったりとしたアリア風の第2楽章、優雅でありながら劇的な第3楽章と、30分ほどの“モーツァルト劇場”を堪能できるだろう。清水華澄菊池洋子 ©Marco Borggreve下野竜也 ©Naoya Yamaguchi山田和樹 ©山口 敦

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