eぶらあぼ 2016.8月号
38/171
35新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』シェイクスピアの悲劇をプロコフィエフの劇的音楽とバレエで体感文:守山実花オーケストラ・アンサンブル金沢 岩城宏之 没後10年メモリアルコンサート現代作品とレクイエムで名匠を偲ぶ文:笹田和人9/10(土)14:00 石川県立音楽堂コンサートホール9/11(日)15:00 すみだトリフォニーホール問 石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632http://www.oek.jp シェイクスピア没後400年にあたる本年、新国立劇場バレエ団は、新シーズンのオープニングとしてケネス・マクミラン振付『ロメオとジュリエット』を上演する。 プロコフィエフの音楽は、緻密に構成されており、原作のページをめくるように次々と場面が展開していく。音を聴いているだけでも、様々なシーンが目に浮かぶほどに雄弁だ。とりわけ、見事なのは、若い恋人たちの軽やかさ、疾走感と、彼らを取り囲む旧弊で重々しい世界、相反する二つの世界の描き分け。対立する二つの家族に重くのしかかる宿命、そこに清々しい一陣の風を吹き込みながらも、運命に翻弄され、のみ込まれていく恋人たちの姿が浮かび上がってくる。 出会いから死までわずか1週間足らず、ただ一度の恋にすべてを賭け、人生を駆け抜けていく恋人たちの物語は、あまたの振付家によってバレエ化 今年は、日本を代表する指揮者として活躍し、ユニークな言動や文筆活動でも知られた岩城宏之の没後10年。設立から深く関わり、初代音楽監督を務めたオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と、やはり音楽監督を務めた東京混声合唱団がジョイント、山田和樹の指揮で金沢と東京でメモリアルコンサートを開く。 コンサートの軸となるのは、静謐で美しい旋律に溢れたフォーレの「レクイエム」。吉原圭子(ソプラノ)と与那城敬(バリトン)、2人の名ソリストを迎えて、OEKと東混が癒しのハーモニーを紡ぐ。さらに、無伴奏合唱により、生前の岩城が力を注いだ現代の作品から、リゲティ「ルクス・エテルナ(永遠の光)」を披露。現在、東混の音楽監督を務め、国際的に活躍する注目の俊英・山田の音楽創りに、特に期待が高まる。東京公演では、ここにベートーヴェンの交響曲第2番が添えられる。されているが、その中でも頂点の一つとされるのが、今回上演されるマクミラン版だ。その魅力は生き生きとした感情表現。長大なシェイクスピアのセリフが語られることはないのに、ダンサーの全身からは、登場人物たちの心の声がほとばしり、私たち観客の心を強く揺さぶるのだ。恋人たちの高鳴る胸の鼓動や、震えるような甘い囁き合い、身を切るような絶望を、観客もまた自身の身体を通じて体験することができるほどに。 主役はもちろん、色濃いキャラクターをダンサーたちがどう造形し、ドラマを生成していくのか、キャストによる見比べもまた楽しい。 金沢公演は「ディスカヴァリー・クリエーション~過去・現在・未来~」と題して、フォーレとリゲティに加えてバーバーのヴァイオリン協奏曲が披露される。ソリストは、OEK第1コンサートマスターを務めるアビゲイル・ヤング。彼女は、2007年から北陸にゆかりの深い実力ある音楽家に贈られている「岩城宏之音楽賞」の2016年度の受賞者でもある。イギリス・グラスゴー出身で、イギリス室内管弦楽団の副コンサートマスターなどを経て、1999年にOEKと初共演。「偉大なマエストロ岩城と一緒に仕事をできたのは幸運。没後10年の節目に受賞できたことを大変名誉に思っています」と同賞受賞時にコメントしている。撮影:鹿摩隆司岩城宏之アビゲイル・ヤング山田和樹 ©Marco Borggreve10/29(土)~11/5(土) 新国立劇場 オペラパレス問 新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999http://www.nntt.jac.go.jp/ballet
元のページ