eぶらあぼ 2016.8月号
35/171
Presented by ASPEN INC. チェロ・シーンに現れた逸材として早くから注目を集めていた新倉瞳。2006年のCDデビュー後は様々なメディアでとりあげられ、その才色兼備なスター性が話題を呼んだ。そんな彼女にとって転機となったのが10年からのスイス・バーゼル音楽院への留学だったという。 「日本の狭い音楽界のなかで名前だけがひとり歩きしてしまっているようで、自信も持てず、何をしていいのかわからなくて悩んでいた時期がありました。しかし、スイスに行って、それらから“解放”されたのです。新しい環境の中で自分を見つめ直したら、世界クラスの演奏家と一緒に演奏する機会がある中で、自分の小ささと自分の良さの両方が見えました。そう思ったら吹っ切れて、それからは沢山の素敵な出会いにも恵まれ、色々なことを吸収してポジティヴ志向に。現在のカメラータ・チューリッヒのソロ首席チェリストというポジションも素晴らしいのですが、それをゴールにはしないで、何事にも挑戦し続けたい」 今年は、『俊英たちの瞬間(とき)』としてCD発売された、昨年末に浜離宮朝日ホールで行われた圧巻ライヴ(ピアニスト佐藤卓史との共演/ナミ・レコード)も好評を博した。そして、9月にはサントリーホール(ブルーローズ)でデビュー10周年記念コンサートも予定されている。 「10周年記念だからといって、私のワンマン・ショーみたいなものではなく、ゆかりのあるゲストを迎えて意外なプログラムで魅せるようなステージにしたい。例えば恩師でもあり同ホール館長でもある堤剛先生とはヴィヴァルディ『2つのチェロのための協奏曲』に挑戦します。学生時代の先輩後輩で構成された東京チェロアンサンブルとは、フォーレ『パヴァーヌ』を、そしてバーゼルの同期生であり、現在は神奈川フィルの第一コンサートマスターを務める﨑谷直人さんたちとは、シューベルト『弦楽五重奏曲』などを予定。他にもパガニーニ『モーゼの主題による変奏曲』など、トークも交えた楽しい時間を考えていますが、どの曲も感慨深いので泣いてしまうかもしれません(笑)」 数多くの名器を扱っている日本ヴァイオリンからは、C.F.Landolfiを貸与されている。また、先述の浜離宮朝日ホール・ライヴでは名器中の名器であるMatteo Goffrillerを同社より特別貸与されて使用した。 「Landolfiによって、明るくて硬質な響きを自在に弾き出せるようになりましたし、Goffrillerには(浜離宮朝日ホールで演奏した)ブラームスのソナタのような曲が持つ深みを極める力を貰った。そうやって私自身が名器に育てられてきたのだと思います」 スイスではクレズマー(東欧系ユダヤの音楽)演奏のグループにも参加。複数ファッション・ブランドとコラボし、演奏家やコンサートゴーアーのファッションを提案する「伊勢丹ドレスプロジェクト」など、その活動は幅広く今後も更なる活躍が期待される。「可能性を狭めたくないんです。“こうあるべき”にとらわれず、常に前向きに進んでいきたい!」デビュー10周年。常に前に進んでいきたい取材・文:東端哲也©Takaaki Hirata新倉瞳デビュー10周年記念コンサート出/堤剛(スペシャル・ゲスト/チェロ) 東京チェロアンサンブル 特別弦楽合奏団(コンサートマスター:﨑谷直人)曲/A.ヴィヴァルディ:2つのチェロのための協奏曲 ト短調 RV531 シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調より第1楽章 パガニーニ:モーゼの主題による変奏曲 バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 フォーレ: パヴァーヌ9/16(金)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)全席指定:¥6000問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jpHitomi Niikura/チェロ
元のページ