eぶらあぼ 2016.8月号
147/171

152CDSACDSACDCDブルックナー:交響曲第8番/スクロヴァチェフスキ&読響ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 他/毛翔宇シャコンヌ 無伴奏ヴィオラ作品集/川本嘉子ヒンデミット:ホルン・ソナタ 他/バボラーク&菊池洋子ブルックナー:交響曲第8番スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)読売日本交響楽団ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番、8つの小品 op.76毛翔宇(ピアノ)J.S.バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番)、無伴奏チェロ組曲:第1番・第5番、ラルゴ(無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番)/テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジー第7番/ヴュータン:カプリッチョ川本嘉子(ヴィオラ)ヒンデミット:ホルン・ソナタ、アルトホルン・ソナタ、ホルン協奏曲/ケクラン:モノディ⊖ノクチュルヌ op.213、モノディ op.218 bisラデク・バボラーク(ホルン)菊池洋子(ピアノ)収録:2016.1/21、東京芸術劇場(ライヴ)日本コロムビアCOGQ92-3(2枚組) ¥3800+税コジマ録音ALCD-9149 ¥2800+税マイスター・ミュージックMM-3080 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCC-00124 ¥3200+税92歳になったスクロヴァによるライヴ盤。第1楽章は多少粗っぽいところもあるが、オーケストラの気迫が並々ならぬ証拠。第2楽章あたりから弦がジューシーに鳴り(スケルツォの再現部など実に豊かな響きがする)、長大な第3楽章では、巨大な音の波が何度も打ち寄せては神々しい瞬間を運んでくる。終楽章はテンポを細かく切り替えながらオーケストラを躍動させ、前の楽章と鮮やかなコントラストを作る。筆者は録音とは別日の公演を聴いたが、特に第3楽章の雄大さに圧倒された記憶がありありと蘇ってきた。少し歩きにくそうではあったが、90分を立って指揮して、これだけの演奏を残すとは…。(江藤光紀)北京に生まれ香港で育ち、ジュリアード音楽院で博士号を取得したピアニスト、毛翔宇のアルバム。アメリカや日本でもリサイタルを行ってきた彼が、ブラームスのピアノ作品の持つ重さ、繊細さ、暗さ、甘さを1枚のアルバムで存分に聴かせる。ソナタ第3番の第1楽章では、アルバム全体の基調色を提示するように、シリアスな表情を崩さず淡々としたテンポ感を貫く。第2・第4の緩徐楽章では柔和な音色使いで深い詩情を伝える。誠実なタッチと丁寧な楽譜の読み込みをうかがわせるのは、「8つの小品 op.76」。激したカプリッチョと内省的な間奏曲のコントラストが美しい。(飯田有抄)ヴィオラの可能性を切り拓いて来た、わが国を代表する名手が、無伴奏の佳品たちに対峙した。オクターヴ上で奏される、バッハのチェロ組曲第1番は、飛翔感が倍増。同じくヴァイオリンのためのパルティータ第2番からの「シャコンヌ」では、ヴィオラだからこその中音域の充実ぶりに、まるで壮麗な伽藍の内部を覗き見たような、不思議な感覚にさせる。テレマンが湛える深い精神性に至っては、この楽器のためのオリジナル作品と聴き紛うほど。高い技巧で裏打ちしつつも、それを決して誇示するようなことはしない。ヴィオラという楽器の、底力を知らしめる名演だ。(寺西 肇)世界最高のホルン奏者による初のヒンデミット作品集。菊池洋子とは3枚目の録音となる。最近指揮活動が目立つバボラークだが、今年録音された本作は、彼が今なお真摯なプレイヤーであることを如実に示す内容だ。こうした技術的な難曲を、細部まで完璧にコントロールし、魅せる表現の難しい各曲を、作曲者特有の語法を保ちながら多彩な表情で聴かせていることに、改めて感服させられる。さらに特筆すべきは菊池のピアノ。その雄弁な演奏が、音楽に立体感をもたらしている。ケクランの無伴奏曲2曲も唖然とするほどの快演。解説書を含めて資料的な価値も高い。(柴田克彦)

元のページ 

page 147

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です