eぶらあぼ 2016.8月号
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150CDCDCDCD落葉松~アルトとギターで紡ぐ日本の歌/小川明子&荘村清志Elämälle‒人生に‒/井上雅人ブラームス:交響曲第1番 他/ミュンシュ&日本フィル第9回 浜松国際ピアノコンクール 2015越谷逹之助:初恋/多 忠亮:宵待草/大中寅二:椰子の実/山田耕筰:箱根八里は、赤とんぼ、この道/瀧 廉太郎:花/中田喜直:夏の思い出、小さい秋みつけた、雪の降るまちを/武満 徹:翼、小さな空 他小川明子(アルト)荘村清志(ギター)ベッリーニ:優雅な月よ/ヴェルディ:プロヴァンスの海と陸/リスト:高貴な愛、おお愛しうる限り愛せ/ワーグナー:優しい夕星よ/メリカント:金のかけら、人生に/クーラ:夜、秋の想い/シベリウス:3月の雪の上のダイアモンド 他井上雅人(バリトン)小瀧俊治(ピアノ)ヤンネ舘野(ヴァイオリン)ブラームス:交響曲第1番、ハイドンの主題による変奏曲シャルル・ミュンシュ(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団J.S.バッハ(ブゾーニ編):シャコンヌ/ベートーヴェン:ソナタ第23番「熱情」・第31番/ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3つの断章/ラフマニノフ:ソナタ第2番 他アレクサンデル・ガジェヴ、ロマーン・ロパティンスキー、ダニエル・シュー、アレクシーア・ムーサ、アレクセイ・メリニコフ、フロリアン・ミトレア(以上ピアノ) 他ナミ・レコードWWCC-7813 ¥2500+税OFFICE LAULULAULU-01 ¥2000+税収録:1962.12/20、東京文化会館12/27、日比谷公会堂(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00597 ¥2700+税2015.11~12、アクトシティ浜松(ライヴ)コジマ録音ALCD-7201/7202(2枚組) ¥3600+税小川明子の日本歌曲にはいつも本当に安住できる。深く濃密なアルトの響き、丁寧に紡ぐフレーズ、ヴィブラートの清潔なコントロール…。思わず聴き惚れてしまう。そして今回は荘村清志のギター伴奏! 彼も十八番とする武満のギター伴奏版はよく耳にするが、日本歌曲をこれだけまとめてギターで聴く機会は、これまでにあまりなかったと思う。これが想像以上にフィットしている。基本的には原曲のピアノ伴奏のイメージをそのままギターに移植しているようだが、日本歌曲の世界観の親しさや、旋律とテキストとの距離感に、ギターの親密な響きがこんなにもふさわしかったとは!(宮本 明)二期会会員で数々のオペラの檜舞台で重要な役回りを演じる一方、宗教作品や歌曲も得意とする名バリトンが、自身の人生を映し出したような選曲で挑んだアルバム。優れた音響で知られるsonoriumでの収録。オペラからの名アリアはもちろん、歌曲ではリストに加えて、メリカント、クーラ、シベリウスといったフィンランドの作曲家の名が並ぶのは、いかにもヘルシンキに学んだ井上らしい。骨太で温かな美声の向こうに強く感じ取れるのは、作品に対峙する真摯な姿勢と愛情。饒舌過ぎず、だがしっかりと歌声に寄り添うピアノの小瀧と、ヴァイオリンの舘野は実にいい仕事を聴かせる。 (笹田和人)故・若林駿介氏が所有していた貴重音源からのCD化、実に音が良い。日本フィルが見事に“ミュンシュ化”している! 「ブラ1」冒頭こそ型通りに始まるが、続く経過句では昨今の演奏からはなかなか聴けないようなアゴーギクで楽想の性格を丹念に表出し、主部への移行にもドラマがある。楽章が進むにつれてその演奏は熱気を増して行き、終楽章ではミュンシュの即興的な煽りに日本フィルが崩壊しかかりながらも必死に食らいついて行く様がすさまじい。「ハイドン〜」では通例よりもゆったりしたテンポを取る変奏の中で、構成よりは情感で聴かせるところなど実にミュンシュ的。異色の名演だ。(藤原 聡)昨年の浜松国際コンクールのライヴ録音で、第1〜4位&各賞受賞者の演奏を収録。驚くべき高水準なので、コンクールだということを忘れ、まるでコンサートのライヴ録音のように一気に聴き切ってしまった。第1位のガジェヴが弾く冒頭のJ.S.バッハ「シャコンヌ」は、滑らかで緻密なサウンドが光る当盤の白眉。第4位のフロリアン・ミトレアの収録曲は、モーツァルトのピアノ四重奏曲第2番。豊嶋泰嗣、磯村和英、上村昇という豪華な共演者と充実した音楽を聴かせる。入賞者のレベルの高さと、多彩な選考方法の両面で、浜松が世界トップクラスの国際コンクールに定着したことを改めて実感する。 (渡辺謙太郎)

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