eぶらあぼ 2016.8月号
141/171

146CDSACDCDCDベートーヴェン:ミサ・ソレムニス/アーノンクール&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス春の声/森 麻季斎藤雅広・放送録音セレクション(1978~1986)5つのミニアチューレ/ザ・クラリネット・アンサンブルベートーヴェン:ミサ・ソレムニスニコラウス・アーノンクール(指揮)ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスローラ・エイキン(ソプラノ)ベルナルダ・フィンク(アルト)ヨハネス・クーム(テノール)ルーベン・ドローレ(バス)アルノルト・シェーンベルク合唱団ドリーブ:花の二重唱/オッフェンバック:ホフマンの舟歌/J.シュトラウスⅡ:私の侯爵様、ワルツ「春の声」/フンパーディンク:夕べの祈り/マーラー:天上の生活(交響曲第4番第4楽章) 他森 麻季(ソプラノ)林 美智子(メゾソプラノ)大勝秀也、エリアフ・インバル(以上指揮)日本フィルハーモニー交響楽団東京都交響楽団リスト:メフィスト・ワルツ第1番、超絶技巧練習曲集第4番「マゼッパ」/バラキレフ:東洋風幻想曲「イスラメイ」/プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番「戦争ソナタ」/ショパン:ポロネーズ第7番「幻想」、マズルカ第27番/ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」op.39-5/プーランク:夜想曲集第4番斎藤雅広(ピアノ)J.S.バッハ:序曲(パルティータ第4番)/モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」/磯部周平:5つのミニアチューレ、メタモルフォーゼン Ⅱ/ダマーズ:四重奏曲/ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」/シューマン:子供の情景 他ザ・クラリネット・アンサンブル[山本正治、磯部周平、十亀正司、三界秀実、澤村康恵]収録:2015.7/3~5、グラーツ(ライヴ)ソニーミュージックSICC-30279 ¥2600+税エイベックス・クラシックスAVCL-25890 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7812 ¥2500+税マイスター・ミュージックMM-3081-82(2枚組) ¥3900+税今年3月に急逝したアーノンクールの最後のライヴ録音。前作の「運命」が驚くべき演奏だったので、期待は大きかったが、それをはるかに上回る名演。アーノンクールにとって、完全ピリオド楽器によるこの作品の初めての録音で、冒頭「キリエ」から透明な弱音が美しい。「グローリア」は爆発的に突き抜ける。“ベネディチムステ”の激しいアタックはトスカニーニ以来か。終結フーガの熱き高揚、「クレド」の“インカルナートゥス”の旋法和声の繊細さ、「フーガ」の精妙な美感、「ベネディクトゥス」の天国的な浄福、「ドナ〜」の心からの平安の希求など、巨匠の集大成にふさわしい遺言である。(横原千史)オーケストラをバックに、人気の名曲集をパーフェクトに聴かせる。びしばし決まる痛快な高域のコロラトゥーラも、上から下まですべてのレンジで実に説得力がある歌も、いつもどおりの彼女の美質だ。“声”ではなく“歌”をちゃんと聴かせてくれる。特にシュトラウスの2曲がなんとも楽しいし、林美智子との「花の二重唱」も美しい。SACD層限定のボーナストラックとして、1曲ごとにワンポイントマイクで収録した音源が収録されているのも面白い。最終トラックのマーラーの交響曲は、EXTONレーベルから既発売のインバル&都響の全集録音から。(宮本 明)とてつもなく驚喜を与えてくれる音源だ。1978〜86年、ピアニスト斎藤雅広が「芸大のホロヴィッツ」と称され、“毎コン”(現・日本音楽コンクール)の覇者として周囲を感嘆の渦に巻いていた時代にNHK-FMの番組で録音された音源が、CDとして甦った。メフィスト・ワルツ第1番、イスラメイ、戦争ソナタ、幻想ポロネーズ、マゼッパといった高度な作品を、エネルギッシュな身体能力と、研ぎすまされた感性・知性とで構築していく様は、凄まじいほどの迫力と聴き手を引き込む魅力に満ちている。現在も輝く斎藤の、活動の原点ともいえる響きに出会える1枚。(飯田有抄)デュッセルドルフ響の首席などを歴任した山本正治をはじめ、第一線のクラリネットの名手5人で構成されたアンサンブルによる名盤が、リマスタリングを経て復活。B管に加えて、Es管やバセットホルン、バス・クラリネットを駆使した響きの宇宙が、より大きなダイナミズムと広がりを纏った。メンバーである磯部周平作曲のタイトル曲などのオリジナル作品はもちろん、編曲作品にも「クラリネットで演ること」の意義が濃厚。特に、モーツァルト「狩」は、弦楽四重奏の物真似ではなく、この楽器ならではのアーティキュレーション取りで、新たな角度から名曲の魅力を浮き彫りにする。(笹田和人)

元のページ 

page 141

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です