eぶらあぼ 2016.7月号
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52マリオ・ブルネロ(チェロ) & キャサリン・ストット(ピアノ)11/23(水・祝)14:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 7/9(土)発売他公演11/19(土)青山音楽記念館バロックザール(075-393-0011)11/20(日)豊田市コンサートホール(0565-35-8200)マリオ・ブルネロ(チェロ)プログラムで大事なのは作品の“対話”です取材・文:宮本 明Interview チェロ奏者として、指揮者として、マリオ・ブルネロにとって紀尾井ホールは日本でのホーム・グラウンドのような場所。今年の秋もそこに戻ってくる。2年ぶりのリサイタルのプログラムはシューベルト「アルペジオーネ・ソナタ」、マーラー「亡き子をしのぶ歌」、イザイ「無伴奏チェロ・ソナタ」、ペルト「フラトレス」、ストラヴィンスキー「イタリア組曲」。 「プログラムで大事なのは作品の“対話”です。たとえば前半はシューベルトとマーラーの対話。巨大な交響曲を書いたマーラーも、その音楽の中の一番大事な要素は“歌”です。シューベルトに始まる19世紀のウィーンの歌の時代を背景に、その時代の最後の偉大なリート作曲家マーラーに至る、両極に位置する2つの作品の対話。『亡き子』の素晴らしい旋律は、チェロで弾いてもその悲劇、絶望の声を十分に伝えてくれるでしょう。その時、歌詞は必要ありません」 しばしば歌曲も取り上げる彼の、その選曲眼やセンスにはいつも唸らされる。 「もちろん歌詞がないと成立しないと感じる作品もあります。たとえば大好きな『冬の旅』。以前全曲をヴァイオリンやチェロ、ピアノに割り振って演奏したことがあるのです。でも、歌詞がないとどうしても意味が伝わらない曲があって、実験的に、俳優さんを呼んで歌詞の朗読を入れました。朗読の部分は音楽なしでしたが、そうすると彼の言葉はもちろん、歌詞の意味さえも音楽になる。興味深い体験でした。いつかチェロで全曲を弾くのが夢なんですけどね」 ピアノのキャサリン・ストットとは初共演。ヨーヨー・マとの共演や小川典子とのデュオで日本でもおなじみだ。 「お互いが同じように学び合えるのが理想的な共演者。キャサリンと私の間にはシンパシーがあるというか、お互い一緒にやってみたいという気持ちが強かったのです。もちろん彼女はチェロのレパートリーを熟知していますから、いろんなアイディアをもらえるでしょうし、たぶん彼女も非常にオープンに、新しいものを吸収して変わっていくのではないでしょうか。ヨーヨーも焼きもちは焼かないでしょう、たぶん…。そう望みます(笑)」 家庭では息子のギターとブルースをセッションして楽しんだりもするそうで、音楽の守備範囲は広い。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」をチェロで弾くのが次のプロジェクトなのだと、「Mama~」とその一節を歌いながら笑って教えてくれた。静かな渋い語り口も、なんとも魅力的な人だ。7/9(土)14:00 紀尾井ホール問 ムジカキアラ03-6431-8186http://www.musicachiara.com菊地美奈(ソプラノ) うたのおもちゃ箱 DX ~手紙~多彩な共演者を招いての“デラックス版”文:宮本 明菊地美奈 ソプラノ歌手・菊地美奈プロデュースの好評『うたのおもちゃ箱』。第3回のテーマは「手紙」だ。《フィガロの結婚》や《椿姫》などオペラの有名な手紙シーンを集めた前半に対して、後半はひとひねり。たとえば片思いの相手に恋文とともに楽譜を送ったが返送されたという悲しい逸話の成田為三の「浜辺の歌」。クララが「あなたは子供みたいだ」と書いた手紙がきっかけで生まれた話が有名なシューマンのピアノ曲「トロイメライ」には、菊地自作の歌詞を乗せて。メロディだけを抜き出して歌曲にするのとはひと味違う試みは、聴いてのお楽しみだ。今回は「デラックス版」と銘打ち、栗林瑛利子(ソプラノ)、加賀ひとみ(メゾソプラノ)、田代誠(テノール)、村田孝高(バリトン)、河野鉄平(バス)とゲストが5人も。声種もすべて揃うので豊かなバリエーションが期待できそう。トークを交えた肩肘張らない雰囲気や美しい照明も評判。耳にも目にも、ちゃんとエンタテインメントにしてくれるのがうれしい。

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