eぶらあぼ 2016.7月号
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42 ©Ayako Yamamoto9/18(日)15:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp金子三勇士(ピアノ)205年にわたる“ソナタ”のタイムトラベル取材・文:飯田有抄Interview 5年という時間は、真摯に取り組む者には十分に成長をもたらしてくれる。21歳で日本でのピアニスト・デビューを果たした金子三勇士が、今年で活動5周年を迎える。北は東北の被災地ボランティア公演から南は九州公演、コンサートホールからアウトリーチ先の小学校まで、大小様々なステージ経験を重ね、音楽家として揺るぎない芯を固めてきた。 「正統派のクラシック音楽アーティストであること、聴衆に対してフレンドリーであること、そして挑戦を続けること、この3つを大切にしています。リストが設立した音楽院で10年かけて学んだことが、僕にとって音楽家としてのアイデンティティであり、『正統派』としての拠り所となっています。一方で、クラシック音楽は『難しい』『お高い』といったイメージが日本の各地にあることも知りました。この5年で視野が広がった分、お客様に対して一層『フレンドリー』でありたいと願うようになりました。例えば、なぜピアニストは燕尾服を来てステージに登場するのか、そんなトークをコンサートで交えると、ピアノ音楽の楽しさが伝わりやすくなると実感しています」 9月に東京オペラシティで開かれる5周年記念リサイタルは、金子にとって大きな「挑戦」だ。「5大ソナタに挑む!」と題し、モーツァルト「トルコ行進曲付き」の第11番、ベートーヴェン「月光」、ショパン第2番「葬送」、そしてバルトーク、リストの5つのソナタを“メインディッシュ”に、「きらきら星変奏曲」「愛の夢」「ラ・カンパネラ」など名曲の“サイドディッシュ”も取り揃えた長大なプログラムを展開する。 「ピアノ・ソナタの原点と言われるスカルラッティの作品も含め、バロックから近現代まで205年のタイムトラベルをお楽しみいただきます。『トルコ行進曲』も『愛の夢』もいわゆる名曲ですが、僕なりに原点に立ち返って楽譜を読み込み、新鮮に磨き上げた演奏をお届けします」 3時間を超える内容だが、金子自身によるトーク付きなので親しみやすい公演となりそうだ。 「フラリとお立ち寄りいただいて、気軽に楽しい午後を過ごしていただきたいですね。学生にはワンコインで参加できる『Miyujiシート』もご用意しています」 昨今では生け花を習い、日本の伝統的な芸術にも目を向ける金子。次の5年は、「ハンガリーと日本の血を引く自分だからこそできる、グローバルな活動をスタートしたい」と目を輝かせた。7/19(火)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp石橋史生(ピアノ) 深遠なるピアノ音楽世界のエッセンス文:笹田和人 北海道教育大学を経て東京芸術大学大学院やミュンヘン国立音楽大学マイスタークラスに学び、ドイツのギムナジウムで講師として音楽教育に携わった経験もあるというピアノの石橋史生。1993年に帰国し、翌年にリサイタル・デビューを果たして以降、ソリストとしてはもちろん、声楽や管弦楽器奏者のパートナーとしても卓越した能力を発揮するなど、精力的な活動を続けている。その一方で、現在は東京学芸大学教授として、後進の指導にも力を注いでいる。 毎回、時空を超越するような感覚が味わえる、個性的な選曲で知られる石橋のリサイタルだが、今回はさながら“鍵盤楽器のための音楽の歴史”を俯瞰するプログラム。バッハのパルティータ第5番とバロックに始まり、ベートーヴェンのソナタ第4番と古典派、ロマン派からはショパンの即興曲第1~3番、そして近代の作品であるスクリャービンのソナタ第3番と時代を下ってゆく。それはまた、石橋の深遠な音楽世界のエッセンスでもある。

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