eぶらあぼ 2016.7月号
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滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロも披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールで行われる注目公演をご紹介します。びわ湖ホールPreview 今回は、モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》がテーマ。事前に公募のすえ、選抜された数名の受講生が、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーによるソリストと、2人のピアニスト、大阪交響楽団を相手に、沼尻の指導を受けながら、序曲や主要なアリア、アンサンブルの指揮の実践から、下稽古やステージの方法までを学んでいく。3日間にわたるセミナーは、全ての聴講が可能。音楽の面からのオペラ創りの本質がつぶさに理解できる、貴重な機会となりそうだ。 びわ湖ホール芸術監督の沼尻竜典が「今、最も聴いてほしい作品」を厳選しておくるシリーズ「沼尻竜典オペラセレクション」が、2007年のスタートから10回目を迎えた。この大きな節目に取り上げるのは、イタリア・オペラの巨匠ドニゼッティによる《ドン・パスクワーレ》(全3幕、原語上演、日本語字幕付き)。作曲者の生地である本場ベルガモ・ドニゼッティ劇場の全面協力のもと、日生劇場や藤原歌劇団、日本センチュリー交響楽団との共同制作により、イタリアのオペラ・ブッファの最高傑作が、鮮烈な歌声と舞台づくりで新たな生命を得る。 《ドン・パスクワーレ》は1842年に作曲され、翌年にパリで初演。個性的なオペラ・ブッファの佳品を次々に世に出したドニゼッティにあって、特に劇中に散りばめられた魅力的な旋律と小気味良い舞台運びで、その代表作に挙げられている。19世紀初めのローマを舞台に、叔父である金持ちの独身老人ドン・パスクワーレに無理やり結婚させられそうになった甥エルネストが、医師マラテスタによる筋書きに基づいて、意中の女性ノリーナと共にひと芝居打って叔父を騙し、幸せと富を手にするというストーリーだ。 特にドイツ・オーストリア作品のスペシャリストとして知られるが、イタリア・オペラの寛いだ雰囲気に「ほっとさせられる」と明かす沼尻。“ブッファ”でも卓越した手腕を発揮し、オペラファンを酔わせてくれることだろう。今回は、2004年から11年間、ベルガモ・ドニゼッティ劇場の芸術監督を務め、ドニゼッティ作品を中心に50本以上の舞台制作を手掛けたフランチェスコ・ベッロットを演出に迎える。キャストは、タイトルロールに牧野正人、エルネストにはドニゼッティ劇場でも大活躍する超人気テノールのアントニーノ・シラグーザ、マラテスタに須藤慎吾、ノリーナに砂川涼子ら豪華な顔ぶれ。そして、日本センチュリー交響楽団とびわ湖ホール声楽アンサンブル、藤原歌劇団合唱部という布陣で臨む。 また、びわ湖ホールでは昨年度から、沼尻による「オペラ指揮者セミナー」をスタートした。「若い音楽家が将来羽ばたくために活用を」と、若杉弘・初代芸術監督の夫人である長野羊奈子氏から遺贈された「若杉・長野音楽基金」を活用。びわ湖ホールならではの、満を持しての企画だ。オーケストラは、ピットの配置そのままを舞台に上げ、歌い手は一段高く設定された特設の場所で歌うなど、普段は隠れて見えない“現場”を公開。オペラに特化した指揮セミナーは他に例がないこともあり、要注目だ。沼尻竜典 ©RYOICHI ARATANI沼尻竜典オペラセレクション 歌劇《ドン・パスクワーレ》全3幕(イタリア語上演・日本語字幕付)10/23(日)大ホール 14:00 沼尻竜典オペラ指揮者セミナー Ⅱ~《ドン・ジョヴァンニ》指揮法~8/10(水)~8/12(金) 大ホール文:笹田和人沼尻竜典の指揮と豪華なキャストでおくる傑作オペラ・ブッファ昨年の指揮者セミナーの模様びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/

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