eぶらあぼ 2016.7月号
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鈴木「単独で1曲だけを弾いたり、父(鈴木雅明)と2台の協奏曲を弾いていますけれど、3台と4台は学生のとき以来かもしれません」渡邊「僕はバッハの協奏曲が出発点のひとつであり、1981年から協奏曲のシリーズを始めました。当時はまだチェンバロという楽器やバッハの協奏曲を一般に広めたいという気持ちが強かったですね。バロック・スタイルで演奏するアンサンブルも日本にはまだなかったので、若い世代の奏者を育てたいという気持ちもありました。結果、若松夏美さんや高田あずみさん、鈴木秀美さん、諸岡範澄さんなどが興味を抱いて参加してくれたのです」曽根「バッハの協奏曲が、日本における古楽の歴史の中で大切な役割を果たしていたのですね」 協奏曲では、戸田薫(ヴァイオリン)や三宮正満(オーボエ)らが参加した「チェンバロ・フェスティバル・アンサンブル」が共演する。また、協奏曲だけではなく、曽根と鈴木はそれぞれソロのリサイタルを、渡邊と大塚はデュオのリサイタルも行う。もちろんそこでもJ.S.バッハの作品が中心となり、企画・選曲はそれぞれの個性が出ていて面白い。曽根「私はこれまでコンサートでは弾いていない『平均律』の第2巻にチャレンジします。抜粋して12曲くらいになりますが、ずっと弾きたいと思っていましたし、昨年にパリから届いた新しい楽器にも馴染んできましたので、“今がその時だ!”と思えました」 チェンバロ奏者にとってJ.S.バッハの作品は、荘厳な神殿のような威厳を漂わせているのだろうか、それとも寄り添ってくれる家族のような存在だろうか。 これまでにも多くのチェンバロ・コンサートが開催されてきた浜離宮朝日ホールを舞台に、濃密な3日間が繰り広げられる『チェンバロ・フェスティバル in 東京』。 今年は、芸術監督である曽根麻矢子を中心に、チェンバロおよび古楽シーンにおけるリーダー的存在の渡邊順生、演奏活動のほかNHK-FM『古楽のたのしみ』のパーソナリティも務める大塚直哉、そして指揮者・作曲家としても実績を積み上げている鈴木優人が加わり、J.S.バッハの曲を中心に多くの作品を演奏する。特に14曲の協奏曲(1台×8曲、2台×3曲、3台×2曲、4台×1曲)を2回のコンサートで一気に演奏するのは、演奏者にとっても聴き手にとっても破格の挑戦だ。曽根「私自身もこのホールでバッハのシリーズをやらせていただいたので“Back to Bach”という気分ですが、チェンバロ奏者が集まって協奏曲を共演する機会も意外に少ないですね」大塚「僕は実を言いますと協奏曲を避けてきたので、演奏すること自体が新鮮なんです」曽根麻矢子 × 大塚直哉 ×チェンバロ・フェスティバル in 東京4人のチェンバリストがバッハと向き合う濃密な3日間曽根麻矢子大塚直哉26

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