eぶらあぼ 2016.7月号
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162CDCDCDCDシベリウス・リサイタル Vol.4/渡邉規久雄三善 晃 宇宙への手紙/藤井宏樹&Ensemble PVDフレスコバルディ&フローベルガー:チェンバロ作品集/渡邊順生バルトーク:《青ひげ公の城》/小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラシベリウス:5つの小品「樹の組曲」・「花の組曲」、「カレリア」組曲、ソナチネ第1番~第3番、悲しきワルツ(ピアノ版)渡邉規久雄(ピアノ)三善 晃:子どもの季節、四季に、五つの日本民謡、宇宙への手紙、鳥藤井宏樹(指揮)Ensemble PVD(合唱)五味貴秋(ピアノ)フレスコバルディ:トッカータ第2巻第7番・第11番、ロマネスカのアリアに基づく14のパルティータ、パッサカリアに基づく100のパルティータ/フローベルガー:トッカータ第2番・第18番、組曲第27番・第20番、皇帝フェルディナント3世のトンボー 他渡邊順生(チェンバロ)バルトーク:歌劇《青ひげ公の城》小澤征爾(指揮)サイトウ・キネン・オーケストラマティアス・ゲルネ(バリトン)エレーナ・ツィトコーワ(メゾソプラノ) 他収録:2015.11/29、東京文化会館(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCT-00121 ¥3000+税収録:2014.9/18、府中の森芸術劇場(ライヴ)日本アコースティックレコーズNARC-2128 ¥2500+税コジマ録音ALCD-1159 ¥2800+税収録:2011.8/21,8/27まつもと市民芸術館(ライヴ)ユニバーサル ミュージックUCCD-1431 ¥3000+税過度な技巧や装飾を排したシベリウスのピアノ作品たち。その第一人者として演奏活動を続ける渡邉規久雄によるライヴ録音第4弾がリリースされた。シベリウス生誕150年を記念して、昨年11月29日に開かれた東京文化会館でのリサイタル音源である。もっとも有名な「樅の木」を含む「樹の組曲」、愛らしい「花の組曲」のほか、内省的な雰囲気を湛えたソナチネ第1〜3番などを収録。渡邉はこのリサイタルの翌月に、フィンランド・シベリウス協会から歴史あるシベリウスメダルを授与された。フィン人の血を引く渡邉が丁寧に紡ぎ出す抒情性に満ちた一枚だ。(飯田有抄)「日本民謡」は別としても、比較的聴かれる機会の少ない作品による、三善の合唱曲ファンには貴重な音源。23人の合唱は、コーラスとして整った美しい響き、いくつか聴かれるソロでも明らかな(特に女声の)個々の力量の高さ、よく楽譜を読み込んでびしびしと決まる音程。ライブ収録ゆえの瑕疵もなくはないが、ほぼパーフェクト。作曲家が音符に念じ込めた濃密な思いを、歌い手一人ひとりが敏感に掬い取とった濃厚な表現が、指揮者・藤井とこの合唱団が持つ三善作品への愛情の深さを表しているようだ。彼らには、このアルバムで到達した“山頂”のさらに先にある“頂”への登頂を期待したい。(宮本 明)ドイツの鍵盤音楽の先駆者フローベルガーと、その師であるイタリアの大家フレスコバルディを対置したアルバム。いつもながら折り目正しい名手のアプローチは、虚飾や技巧の誇示とは一線を画す。だからこそ、師弟ならではの共通項の半面、2人の作曲家の厳然たる様式の相違を浮き彫りに。さらに、楽器研究でも知られる渡邊だけに、フレスコバルディでのイタリアン一段、フローベルガーでのフレミッシュ二段鍵盤と言う選択にも、単なるサウンドの違いを超えた、表現上の必然性を際立たせる。これら複製楽器を製作した故・柴田雄康の偉業を称える、奏者自身による一稿も余韻を生む。(寺西 肇)《青ひげ》は古城にひっそりと暮らす男(ゲルネ)のもとへ来た新妻(ツィトコーワ)が、血塗られた拷問部屋や財宝部屋の扉を開いていくという心理サスペンスだが、ディスク全篇に緊迫感が張りつめている。扉の向こうに次々に現れる意外な世界、妻の不安と知りたいという気持ちとの葛藤を、緻密なアンサンブルが巧みに描出していく。2011年の本録音では小澤はまだ大手術直後。体調も万全とは言えず、4公演のうち2公演しか振れなかった。しかしサイトウ・キネンはそういう時にこそいっそう燃え上がり、棒の先を読んで小澤の手となり足と化す。両者の結びつきを鮮やかに記録した一枚。(江藤光紀)

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