eぶらあぼ 2016.6月号
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45ダニエル・ハーディング(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団「千人の交響曲」で迎える壮大な集大成文:オヤマダアツシベルリン古楽アカデミーバッハ父子とイタリア・バロックの神髄文:寺西 肇#560 定期演奏会7/1(金)19:15、7/2(土)14:00 すみだトリフォニーホール7/4(月)19:15 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jpヨハン・セバスティアン・バッハとカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ6/23(木)19:00ヴェネツィアの休日 ― 協奏曲とシンフォニア 6/27(月)19:00トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com ミュージック・パートナー・オブ・NJPという、他のオーケストラにはないタイプのポストにダニエル・ハーディングが就任したのは2010/11シーズンのこと。当時すでに国内外で評価・人気共にトップクラスだった若きマエストロは、新日本フィルの指揮台に登場するとさまざまなセンセーションを巻き起こし、多種多彩な曲の演奏を一新していった。 そのハーディングが惜しまれつつ同ポストから退任するのは7月。プログラムにはマーラーの交響曲第8番という大作が選ばれており、早くも“スペシャル感”が満載だ。これまでにもマーラーの交響曲をいくつか演奏してきたこのコンビだが(その中には「2011年3月11日のマーラー(交響曲第5番)」もある)、今回は集大成となるべき演奏会でもあり、再会を願いつつの惜別を奏でる演奏会でもある。同時に「ハーディングのマーラー」に ひとつの音楽的目標へ、全員が一丸となって向かってゆく。それでいて、一人ひとりの個性が輝き立つ場面も数多い。そんな変幻自在の魅惑的な演奏で、世界中の音楽ファンを虜にし続けているのが、ドイツを代表するオリジナル楽器アンサンブル、ベルリン古楽アカデミー。ソリスト級の名手ばかりで構成される精鋭部隊が、初夏の日本へと降り立つ。 1982年に旧東ベルリンで創設され、89年のドイツ統合以降は、海外での公演にも力を注ぎ、世界中でツアーを敢行。録音にも精力的に取り組み、名演を次々に発表し、権威ある賞を総なめに。その演奏は活動歴を重ねるにつれ、さらに先鋭の度合いを増している感もある。今回のトッパンホールでの公演は、コンサートマスターのゲオルク・カルヴァイトがリード、バロックオーボエの名手クセニア・レフラーが軸となる。 まずは、「ヨハン・セバスティアン・バッハとカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ」と題して(6/23)。ヴァイオリン協奏曲第2番やオーボエとヴァイオリン格別の期待を寄せている聴き手にとっては、ついに8番が聴けるという“スペシャル感”も加味されるだろう。 ハーディング自身が選んだという8人の歌手たち、新日本フィルには欠かせない栗友会合唱団、やはりハーディングの指揮による「戦争レクイエム」でも清らかな歌声を聴かせた東京少年少女合唱隊と、役者は揃った。通常であれば、すみだトリフォニーホールでの定期演奏会とサントリーホールでの定期演奏会には別の曲が演奏される。しかしこの7月は例外的に同一プログラムであることも特筆ものだ。のための二重協奏曲など大バッハの傑作に、オーボエ協奏曲やシンフォニア第5番など次男エマヌエルの作品、さらに父子の両方から影響を受けたモーツァルトが弦楽四重奏へ編曲した「前奏曲とフーガ」(平均律クラヴィーア曲集第2巻から第8番)を交える。 そして、もうひとつが「ヴェネツィアの休日 ― 協奏曲とシンフォニア」(6/27)。有名なマルチェッロのオーボエ協奏曲をはじめ、ヴィヴァルディやアルビノーニ、カルダーラ、テッサリーニなど陰影に富んだイタリア・バロック作品の数々を披露する。ダニエル・ハーディング ©Harald Homann/DG©Kristof Fischer
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