eぶらあぼ 2016.5月号
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67ウィーン少年合唱団世界中の人々の心を癒やす天使たち文:加藤浩子菅野 潤(ピアノ)メシアンの秘曲も披露するリサイタル、そして映画への参加も文:高坂はる香5/3(火・祝)、5/4(水・祝)各日14:00 サントリーホール5/31(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール6/17(金)13:30、6/18(土)14:00、6/19(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.japanarts.co.jp5/27(金)19:00 東京文化会館(小)問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp※映画『スネーク・ダンス』の公開情報は上記ウェブサイトでご確認ください。 今年もまた、ウィーン少年合唱団の季節がやってくる。創設からおよそ520年、初来日から60年。星の数ほどある少年合唱団の老舗、そして最高峰のひとつだ。ウィーンの宮廷礼拝堂でのミサや、オペラやコンサートでの活動に加え、絶えず世界中をまわって音楽を届ける彼らの姿は、「音楽の都」ウィーンの親善大使そのもの。国際色豊かなメンバーは、国境を越えてひとびとを結ぶ音楽の力を感じさせてくれる。 客演する国の民謡やヒットソングをプログラムに取り入れ、その時の事情に応じた活動にも積極的に取り組むサービス精神も、ウィーン少年合唱団の大きな特徴だ。東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」の歌唱は、私たちの心を揺さぶった。彼らが「天使」の声を持つから、というだけではない。言葉の内容を感じ取って音楽に反映させることができる音楽性があるからこそ、私たちの心に届いたのだと思う。 メシアン夫妻との出会いをきっかけに、1970年代後半フランスに渡った菅野潤。メシアン夫人のイヴォンヌ・ロリオはじめ、フランス音楽の伝統を継承する先人たちとの出会いから洗練された音楽性を体得し、長らくパリを拠点に活動を続けている。 「新境地を拓く」と題して行われる今度のリサイタルでは、演奏家人生で常に傍らにあったモーツァルト、自身にとって新しい試みだというシューベルトのピアノソナタから最晩年の第20番、そして、メシアンの作品から日本初演となる「シラヒゲムシクイ」を演奏する。「シラヒゲムシクイ」は、メシアン研究の世界的権威であり菅野の友人でもあるピーター・ヒルが、2012年に手稿譜を発見した作品。1950年代の「鳥のカタログ」に次いで書かれ、未完のまま忘れられていたものをヒルが演奏会用に校訂した。今回は、メシアン作品に深い理解を持つ菅野の手による演奏が聴ける、貴重な機会だ。ウィーン少年合唱団は、ムーティやウェルザー=メストらそうそうたる指揮者と共演し、高い評価を受けている実力の持ち主なのだから。 およそ100人で構成される合唱団は4つのグループに分かれるが、今年は「シューベルト組」が来日。「四季」や「映画」をテーマに組まれたプログラムもおしゃれだ。オーストリア生まれの若きマエストロ(1983年生まれ)で、テノール 一方、今秋には菅野が音楽を手掛けたドキュメンタリー映画『スネーク・ダンス』(SNAKE DANCE)(2012年/監督:マニュ・リッシュ)の全国公開(仙台・長崎他 全国5都市)が予定されている。核兵器の開発をめぐり、カメラは、ニューメキシコ州ロス・アラモス、コンゴ、そし歌手としても活躍するオリヴァー・シュテッヒの指揮にも注目したい。て東日本大震災後の東北地方などを訪ねる。菅野は、原爆投下直後の広島を目撃し、医師を務める父とともに出演。作中では、菅野の演奏によるベートーヴェンやショパンが流れる。核の時代を生きる人間社会について考察する作品。併せてチェックしておきたい。©www.lukasbeck.com菅野 潤 ©吉田タイスケドキュメンタリー映画『スネーク・ダンス』より

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