eぶらあぼ 2016.5月号
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65東京文化会館 《響の森》コンサート vol.38小林研一郎(指揮) 東京都交響楽団真夏の夜に流れる北国の熱気と涼気文:柴田克彦2015年 東京国際音楽コンクール〈指揮〉入賞デビューコンサート難関コンクールを制した俊英の希有な才能を聴く文:笹田和人8/4(木)19:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp5/11(水)19:00 大阪/ザ・シンフォニーホール(公演事務局06-6966-8000)5/15(日)14:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール(MIN-ON中部052-951-5391)5/19(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(MIN-ONインフォメーションセンター03-3226-9999) http://www.conductingtokyo.org コンサートが少なくなる8月に、日本屈指の指揮者、オーケストラ、ピアニストの演奏で、本格的な名曲を堪能できるのが、東京文化会館の「《響の森》vol.38」。同会館の音楽監督を務める“炎のコバケン”小林研一郎の指揮、常にハイクオリティのサウンドを聴かせる東京都交響楽団の演奏、デビュー30周年を迎えて充実を極める仲道郁代のソロで、グリーグのピアノ協奏曲とチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が披露される。 コバケンは、チャイコフスキーの作品を再三再四取り上げ、CDでも昨年、3度目の交響曲全集をロンドン・フィルとのコンビで完成。「悲愴」は通算4回録音している。彼のチャイコフスキーは、全力投球の熱気にあふれた、雄弁な大ドラマ。最新の録音では、70歳を超えての円熟味が加わり、スケールの大きさやこまやかな味わいを増している。今回はまず、この極め付けの“コバケン アジア圏で開催される唯一の指揮者コンクールで、過去4回にわたって第1位を出さないなど、“世界最難関のひとつ”として知られる東京国際音楽コンクール〈指揮〉。3年に一度開催され、第2位や第3位も「該当者なし」が珍しくない登竜門に2015年、15年ぶりの第1位が遂に誕生。21年ぶりに第1~3位の入賞者が顔を揃えた。『入賞デビューコンサート』では、そんな俊英たちが紡ぐ、瑞々しいサウンドが一気に味わえる。 40ヵ国・地域から応募のあった239名の頂点に立ったのは、スペイン出身のディエゴ・マルティン・エチェバリア。母国やドイツでオーボエと指揮を学び、昨年5月からはチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団に所属、受賞時には「準備万端で臨めた。言葉がないほど嬉しい」と語った。そして、東京芸大在学中の弱冠21歳で第2位となったのが、北海道出身ののチャイコ”を、立体的な響きが際立つ都響の演奏で聴けるのが、大きな楽しみだ。特に最後の交響曲「悲愴」は、複雑な感情が盛り込まれた名作。コバケン&都響なら、絶望と悲しみ、濃密なパッションをくまなく描き上げ、熱い感動をもたらしてくれるに違いない。 また、近年ショパン、モーツァルト、ベー太田弦。第3位にはドイツ出身の女性指揮者、コリーナ・ニーマイヤーが入った。 『入賞デビューコンサート』は、3都市で開催。エチェバリアは大阪公演(管弦楽:大阪フィル)と名古屋公演(同:名古屋フィル)でブラームスの第1番、東京公演(同:読響)ではチャイコフスキーの第トーヴェン等で評価の高い仲道だが、グリーグの演奏機会は多くない。作品に真摯に取り組み、深く掘り下げる彼女が、円熟の今いかなるアプローチを見せるのか? 似た表現になりがちな曲だけに、ここは新鮮な感触が期待される。 真夏の夜に、北国ロシアのスケール感と北欧の透明な空気を満喫しよう!5番と、2つの交響曲を披露。また、太田は3公演とも、チャイコフスキー「ロメオとジュリエット」を。そして、ニーマイヤーは大阪でR.シュトラウス「ドン・ファン」、名古屋でストラヴィンスキー「火の鳥」組曲、東京でプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」第2組曲を振る。仲道郁代 ©Kiyotaka Saito小林研一郎 ©満田 聡左より:ディエゴ・マルティン・エチェバリア/太田 弦/コリーナ・ニーマイヤー 写真提供:民主音楽協会(3点とも)
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