eぶらあぼ 2016.5月号
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51©Elizabeth Delage5/23(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 日本アーティストチケットセンター03-5305-4545 http://nipponartists.jp※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。シャルル・リシャール=アムラン(ピアノ)作品自体をじっくりと聴かせるピアニストを目指したい取材・文:伊熊よし子Interview 2015年のショパン国際ピアノ・コンクールにおいて第2位入賞とソナタ賞(ツィメルマン賞)を受賞したシャルル・リシャール=アムランは、弱音の美しい情感豊かな演奏を得意とするピアニストである。彼はカナダのモントリオール出身で、コンクール時は26歳だった。 「ショパンの作品に初めて出合ったのは13歳のときで、『幻想即興曲』でした。それから1年に1曲ずつ学び、徐々に自分のなかでショパンの全体像に近づいていったのです。私はスター性があるわけでもないし、世界中を飛び回る生活も得意ではない。第2位とソナタ賞をいただいたのは、自分としては理想的な結果です。今後はじっくり作品と対峙し、自分のペースを守りながら学びの精神を貫きたい。シンプルな生活が一番ですので…」 コンクール時には「テディベア」の愛称で親しまれたリシャール=アムラン。無欲で真摯でどっしりとした体躯の愛すべきピアニストだが、演奏は聴き手の心を強烈に引き付ける成熟した美音が特徴。来日公演でも“大人の音楽”を披露し、ピアノ好きをうならせた。 「ショパンはルバートが生命線です。これは時間がゆるやかに巡っていくような感覚で、丸いものを感じます。けっして角ばったものではない。私はルービンシュタイン、リパッティ、ルプーの自然なルバートを感じさせる演奏が好きですね。今後は、自分の存在をこれでもかと見せつけるのではなく、あくまでも音楽の後ろに隠れ、作品自体をじっくりと聴かせるピアニストを目指したい」 来日プログラムは、もちろんピアノ・ソナタ第3番は欠かせないと考えたが、バランスと調性、つながりを考慮して決めたという。 「コンクールの5ヵ月前にカナダでショパンのピアノ・ソナタ第3番と『幻想ポロネーズ』の録音をしましたが、まさかこのときはコンクールで入賞できるとは思ってもいませんでした。これまではコンチェルトの仕事も多く、共演したケント・ナガノ、ヤニック・ネゼ=セガンらの指揮者からも助言をいただいています。今後はソロ活動が増えそうで、年間110回のコンサートが入っています」 リシャール=アムランは、ステージに登場する姿が往年の名ピアニスト、ラザール・ベルマンに似ていると思う。ゆったりと歩を進め、ピアノに向かうと美しい響きを醸し出し、聴き手の心を自然に解き放っていく。彼は大器晩成型のように見える。ピアノ好きの心をとらえる美音、ぜひナマの演奏で体験を!第42回 定期演奏会5/28(土)15:00 文京シビックホール問 シエナ・ウインド・オーケストラ事務局03-3357-4870http://sienawind.comパスカル・ヴェロ(指揮) シエナ・ウインド・オーケストラフレンチ・サウンドを創出する強力タッグ文:柴田克彦シルヴィー・ユー 日本の吹奏楽団でフランスのサウンドが出せるだろうか? 答えはイエス。昨年1月に同国の名匠パスカル・ヴェロが、シエナ・ウインド・オーケストラを初めて振ったとき、それが実現した。「喜びの島」や「ダフニスとクロエ」第2組曲の精妙な音の綾と艶美な色彩感は、まさしくフランスのテイストだった。さて5月の同楽団定期に再びヴェロが登場する。今回注目されるのは、ゲスト・コンサートマスターに、パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ管のクラリネットの第1ソリスト、シルヴィー・ユーを迎えること。パリ音楽院では稀少な女性の1等賞獲得者にして、世界各国でソロ活動を行う彼女は、確かなテクニックと豊かな感受性をもち、地元誌では“現代最高のクラリネット奏者の一人”と称されている。「ボレロ」「ラ・ヴァルス」「寄港地」等が演奏され、ヴェロの指揮に彼女のリード(むろん随所でのソロも楽しみ)が加わる今回は、日本の吹奏楽史上稀なフレンチ・サウンドの出現を期待せずにおれない。これは、オーケストラ・ファンも要注目だ。パスカル・ヴェロ

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